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ソフィー・マルソー主演の、言わば「自分探し」の物語。まじめに自分と向き合う、というシリアスなテーマを、ポップな美術と演出でキュートにまとめた、なかなか「イケテル」秀作だ。
親愛なる私自身へ。
今日わたしは7歳になりました。大人のあなたは自分の夢を実現できましたか?
7歳の「私」が40歳の「私」に宛てて何通もの手紙を書き、33年後の配達を公証人に依頼した。
しかし40歳の誕生日を迎えた「私」は、遠い昔の「私」がそんなものを残したことすら覚えていない。というのも子ども時代は貧しくてひもじくて、いつもここから脱したい、こんな生活は嫌だと拒否していたからだ。
父親が仕事に失敗し、一家は貧困生活を余儀なくされ、あげく父親は家を出て、「私」と弟は母親と寄り添いながら貧しい暮らしに耐えていた。それでも創造力を働かせ、幸せを絵に描いて未来の自分に問いかけては、現実回避をしていたのだろう。
やがて「私」は寄宿舎に入り家族と別れ、将来は自分の手で成功を勝ち取り金持ちになる! 必ず実現してみせる! と自分に誓い、努力の結果、地位と権力を握るビジネスウーマンになった。
バリバリと音が出るほどのキャリアウーマンは細身のスーツに身を包み、ハイヒールのカカトをカツカツ言わせて、歩きながら携帯のイヤフォンで部下に指示を出す。時間がない時間がないと仕事以外の人にはゾンザイな口をきき、利益にならない相手は無視するドライな女。
かつて自分もそうではなかったか、ああなんて嫌な女だったのだろうとわが身を振り返る。
さて、そこに届いた過去からの手紙。あなたは今、昔思い描いた仕事に就くことができましたか?
1.○○
2.△△
3.□□
それを選ぶと次の手紙が用意されている。パズルゲームのような誘導で「私」は現実の自分を、腰を据えて見直すことになるのだ。
ミュージック・プロモーションのような遊び感覚の編集でリズミカルに跳ねながら、この年代の女性が陥る不安と焦りをみごとに表出したのは、アートグラフィックが得意の監督ヤン・サミュエル。 また少し痩せたソフィー・マルソーの、軽やかな身のこなしと、いまだに愛らしい表情もキュートな映像にマッチして爽やかな印象を残す。
おそらく観客は、観終わってから自分とじっくり対峙することだろう。果たして私は、昔夢に描いた自分になれただろうか、私は今、幸せなのだろうか、と。
<合木こずえ(Koz) >