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アレハンドロ・アメナーバル監督の「アレクサンドリア」を試写。「海を飛ぶ夢」以来、待ちに待った新作だ。
4世紀のローマ帝国、アレクサンドリア。キリスト教徒と異教徒の紛争直前から物語は始まる。将来を嘱望された若者たちに哲学と科学を教える女性ヒュパティアと、彼女を慕う男たちの、様々な葛藤が描かれる。
歴史の片隅に確かな足跡を残したヒュパティアを、英国が誇る才女レイチェル・ワイズが堂々と演じている。
以前、来日記者会見で彼女の受け答えを間近で見たことがあるが、日本人記者の曖昧な質問にも、その真意を素早く理解し、的確に答えて、会場を沸かせた。無駄な言葉は使わず、わかりやすい単語を使い、にこやかに周りを気遣うレイチェルに、私はすっかり惚れ込んでしまった。
今回の天文学者としての凛々しき姿勢、喋り方、毅然とした態度に、通常のヒロインを越えた風格を感ずる。回りの男たちが改宗や裏切りで、めまぐるしく変わって行くのに対し、一途に研究を続ける彼女だけが、どしりと信念を持ち、揺らぐことなく生きてゆく。
いつの時代も女性の方が胆が座っているのだ。
そんな彼女に愛の告白をし、拒まれてもなお、愛に裏打ちされた友情を貫こうとする青年。
彼女にあこがれつつも、奴隷の身分では思いは叶わず、ふとしたことから傷ついて敵対するキリスト信者に改宗してしまう若者。
ヒュパティアの純粋な学問への情熱も美しいが、まっすぐに彼女だけを見つめる男たちの純情も感動的だ。
宇宙的視野からズームしてローマの都へとたどり着く冒頭の映像、荘厳な石の建造物が次々破壊され、人々が吹き出すモブシーンの迫力......
映像の強い力に惹き込まれ重要な歴史の一端を目撃した満足感に浸る。丁寧に作られた映像設計がアメナーバルらしい。
公開は3月5日から。
(Koz)
■折角逞しい女性の勇姿に見とれていたのに、隣の女性は、途中で携帯を開けていた。その後点滅をはじめた携帯は、足元に置かれたバッグのポケットで、嫌みな光をもらし続けた。これは絶対にやめて戴きたい。暗闇の中、光源が像を結ぶのが映画だという基本的な原理をご存知ないのかー。