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映画批評「カラフル」

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2010年08月24日 配信
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画像1

(c)2010 森絵都/「カラフル」製作委員会

もう一度世界を見つめ直した少年の心の旅。ファンタジーとリアルが絶妙にブレンドされている。(70点)

 罪を犯して輪廻できない魂の“ぼく”に天使らしき存在のプラプラが話しかけた。「抽選に当たりました!」。自分が何の罪を犯したかを思い出せば、もう一度現世に戻ることができるという。自殺した14歳の少年“小林真(こばやしまこと)”の身体にホームステイした“ぼく”だったが…。
       
 直木賞作家・森絵都の原作は、かつて中原俊監督で実写化された。今回のアニメ映画化では、日常を丹念に描くことで定評がある原恵一監督らしく、魂や天使という部分を除けば、ごく普通の家庭とごく普通の学校生活の中、揺れ動く思春期の少年の心情が、繊細なタッチでスケッチされていく。
     
 冒頭は“ぼく”の声が聞こえず、プラプラとのやりとりが、字幕で表されるのが上手い。何しろ、やる気がないのだ、この“ぼく”は。せっかく現世に戻るチャンスをくれるというのに「なんかめんどくさいし…」などと言って、ちっとも張り合いがない。真の身体に入ってはみるが、半年のステイ期間に罪の実態を探り反省するという課題もついつい忘れてしまう。なぜなら“ぼく”は、生き返ることに消極的。だって現世なんてつまらないもの。
     
 だがそんな“ぼく”も、幸せそうに見えた真の家庭環境の本当の姿を知り驚く。弱気な父を軽蔑し、不倫に走った母を嫌悪し、意地悪な兄とは口もきかない真。真自身はといえば、成績は最低だし、友達は1人もいない。唯一の関心は、絵を描くことだけという、どうしようもない少年だったのだ。しかも、好意を抱いていた後輩のヒロカはなんと援助交際をしていた。これでは絶望して死にたくなるのも無理ないな…と思ったところで、早乙女くんという友達ができる。彼との係わりが“ぼく”をどんどんポジティブに変化させていくのだ。早乙女くんは真同様に冴えないヤツだが、とことん優しく人がいい。自分をちゃんと見てくれる、たった一人の大切な友達。それがこんなにも少年を前向きに変えるとは。廃線になった電車の路線を訪ねたり、激安の靴屋に入るエピソードなど、何気ないのにグッとくるものばかりだ。まるで本物の写真のような古いモノクロの風景から、2人で見る夕暮れ時の河原まで。温かみのあるシンプルなキャラクターに対し、風景描写は、緻密で目を見張る美しさだ。
       
 やがて“ぼく”は、周囲の人々の本当の姿を知り、人は1色ではなくいく通りもの色を持つ存在でいいんだと気付いていく。違うスタンスから“今”を見る複眼の着想は、原作品にはよく登場するパターンだ。真が描いた絵は、白い馬が駆ける青空のように見えるが、水面を目指す白馬が泳ぐ青い海のようでもある。どちらも正解なのだ。答えはひとつではない。
    
 最後にプラプラが明かす“ぼく”の秘密やプラプラ自身の正体には、切ない驚きが。天使と一緒に現世をさまよう展開は、フランク・キャプラ監督の名作「素晴らしき哉、人生!」を思わせる。だがすべてハッピーエンドに収束するキャプラ作品と違い、本作の着地点は、より複雑で曖昧なもので、そこが味わい深い。
    
   

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記事提供:映画ジャッジ!
映画批評サイト「映画ジャッジ!」

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