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アメリカに豊かな暮らしを求め旅をする中米移民の現状をリアルに描く(70点)
アメリカに豊かな暮らしを求め、毎年特に中米から多くの移民がメキシコ、アメリカ間の国境を越えてやって来る。移動手段は電車やトラック等があるが、彼らは警察に逮捕されたり、時には殺される事もあり、多くの者は夢半ばで敗れてしまう。2009年のサンダンス映画祭で旋風を巻き起こした日本語で「名無し」の意味を持つ映画『闇の列車、光の旅(原題:SIN NOMBRE)』では移民の少女とメキシコのギャング集団に所属する少年の織りなす物語の中で、移民達がアメリカに辿り着く過程をリアルに描く。
『闇の列車、光の旅』の監督を手掛けたのは日本人とスウェーデン人のハーフのアメリカ人映画監督ケイリー・ジョージ・フクナガで、ニューヨーク・タイムズ紙に載っていたトラックに乗った80人のメキシコ人移民が発見され、そのうち17人は既に死亡していたという記事に興味を持ち本作のアイデアが生まれた。また、監督自身で、移民達がアメリカを目指し旅をしているまさにその現場に赴き、彼らと共に電車の上に乗るといった体験をしているため、映画の中ではほぼ真実が描かれる。フクナガ氏は本作でサンダンス映画祭監督賞を受賞している。
物語は2つの別々のパラレルストーリーとして始まる。1つはメキシコのチアパス州にあるタパチュラという町のストリートギャング集団マラ・サルバトルチャに所属する十代の少年キャスパー(エドガー・フロレス)の物語。ギャングとして生きる事に疑問を持ちながら暮らす彼は、ある日ボスと共にアメリカに向かおうとする移民達から金を巻き上げに行く。しかしボスがある少女を襲った時、彼の中で何かが目覚め、ボスを殺害してしまう。そしてキャスパーはマラ・サルバトルチャのメンバーに命を狙われてしまう事に…。
キャスパーが助けたのはホンジュラスからアメリカに渡ろうとしている少女セイラ(ポーリナ・ガイタン)。彼女の父親は彼女が幼い時にアメリカへ渡った。そして彼がセイラを迎えに来た事から彼女の旅は始まる。父にはアメリカにセイラの知らない家族がいる。旅自体も過酷だがセイラは新しい家族とアメリカでやっていけるか不安だった。しかし、彼女は新しい人生を歩む決心をする。そんな時に現れるのがキャスパーで、全く境遇の違う2人が出会う時、物語は新たな展開を迎える。