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古代ペルシャ版「グリーン・ゾーン」はド派手なアクション・アドベンチャー。ギレンホールの肉体改造が見ものだ。(55点)
孤児のダスタンはその度胸を見込まれペルシャ帝国の王の養子となる。勇猛な若者に成長したダスタンは、叔父と二人の義兄と共に聖地アラムートを制圧。だが進軍は父王の怒りを買った上、王が毒殺されダスタンが疑われてしまう…。
やんちゃだが誰よりも勇敢なダスタンが、父王殺しの真実を暴く旅に出ることから冒険がスタートする。彼が攻め落としたアラムートの姫で、伝説の“時間の砂”の守護者の末裔のタミーナも旅に同行。目的は、ダスタンが戦利品として持つ、時間の砂を収めた短剣を守ることだ。時間の砂を使えば、時を戻して過去を変え、強大な力を得ることが可能になる。誰が何のために時間の砂を狙うのかは、すぐに察しがつくだろう。物語は、さしずめダスタンとタミーナの丁々発止のバディ・ムービーで、無論そこにはロマンスの気配も漂っている。
そんなお気楽なファンタジーのくせに、妙に生臭いのは、事の発端の聖地アラムート侵攻のいきさつが、あまりに現実にリンクしているためだ。何しろ、敵国へ武器を供給しているらしいという未確認情報だけで、大国が小都市に攻め入るのだ。武器提供の真偽を知るものも知らないものも、聖地を踏みにじることに変わりはない。これは誰が見ても、大量破壊兵器がある!と言い張って米国が強行した、イラク侵攻そのものだから苦笑するしかない。
こんな内容をゴリ押しのように埋め込んで、ド派手なCGてんこ盛りの娯楽映画を作ってしまうとは。大量破壊兵器のガセネタで世界を混乱させた失態を、エンタメ映画で遊び倒す手腕は、商魂たくましいハリウッドの真骨頂だ。ベースがアクション・ゲームというだけあり、物語のスピード感はジェットコースター並み。冒険、ロマンス、謎の伝説。観客を一瞬たりとも飽きさせない展開は、過去のジェリー・ブラカイマー作品を総動員したかのようである。コミカルなダチョウレースに不気味な暗殺軍団との死闘など、アクションも満載だ。過剰なまでのサービス精神でラストまで突っ走る。