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2010年06月09日 配信
ナタリー・ポートマンも菩薩である(70点)
スザンネ・ビア監督のデンマーク映画『ある愛の風景』(04)を、『マイ・レフト・フット』のジム・シェリダン監督がリメイク。よき夫、よき父、よき海兵隊将校である兄のサム(トビー・マグワイア)は、厄介者の弟トミー(ジェイク・ギレンホール)が出所するのと入れ替わりにアフガニスタンに出征し、乗っていたヘリを撃墜される。自堕落だったトミーは、悲しみに沈む兄嫁のグレース(ナタリー・ポートマン)と2人の姪を支える中で次第に更生していくが、彼らの間に絆が芽生え始めた頃、死んだはずのサムが別人のようになって生還し……。
過酷な捕虜体験のために心が壊れたサムを、マグワイアは鬼気迫る表情で熱演。妻の不貞をしつこく疑い、近所の犬の鳴き声にも拳銃を取り出し、ついには取り返しのつかない騒ぎを起こすキレぶりが圧巻だ。トミーの人間的な成長を的確に表現したギレンホールも上々。何かというと兄弟を比較する父親を演じたサム・シェパードも、物語に厚みを加えた。
だが本作で最も素晴らしい演技を見せたのは、他ならぬナタリー・ポートマンだろう。夫の戦死を伝えられたときの悲嘆や、2人の娘に注ぐ慈愛、鼻つまみ者の義弟に対する思いの変化や、帰還したサムへのとまどいが、驚くほどリアルに観る者の胸に迫る。1970年代に「山口百恵は菩薩である」というタイトルの本を書いた評論家がいたが、最後にサムの告白を聞くポートマンも“菩薩度”では同等。またしても「顔だけの女優」ではないことを証明したポートマンの名演を、サービスカットの入浴シーンも含め、とくと堪能したい(露出度は「水戸黄門」の由美かおるさん程度のものですけどね)。