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肉体は衰えても“闘魂”は燃え尽きていない。亡くしたものに心を痛める繊細な老人をアントニオ猪木が好演。息子に先立たれた老人と父に棄てられた少年が、喪失感を埋めるかのようにひかれあう姿を通じ、家族の絆とは何かを問う。(60点)
ネタバレ注意! この批評は結末に触れています。
かつて研ぎ澄まされた日本刀のようなオーラを放っていた背中は、今やダボダボのシャツの中で小さくなっている。それでもアントニオ猪木は圧倒的な存在感となってスクリーンを支配する。肉体は衰えても“闘魂”はまだ燃え尽きておらず、しかも亡くしたものに心を痛める繊細な老人を好演。映画は息子に先立たれた老人と父に棄てられた少年が、喪失感を埋めるかのようにひかれあっていく姿を通じ、家族の絆とは何かを問う。
お年寄りばかりが住む団地で用心棒的な役割をする元プロレスラーの大魔神。ある日、いじめられっ子のタクロウを助けたことから仲良くなるが、タクロウの母はタクロウを大魔神に押し付けて恋人の元に家出する。大魔神はタクロウにプロレスの技を伝授し、いじめっ子と闘う術を教える。
大魔神とタクロウの血のつながらない疑似親子物語なのだが、猪木の演技力不足を補うためか、あえて情に流されず淡々とふたりを追うところに好感が持てる。その後、タクロウの父を大魔神が訪ねる一方、大魔神の元妻・ヨシコが大魔神の留守中にやってきてタクロウと知り合う。大魔神もタクロウも、相手の知らないうちに相手の大切な人と会話を交わし、引き会わせようとする。そのぎこちなくもお互いを思いやる気持ちが抑えた演出で輝いていた。また、北村一輝扮するタクロウの父は思ったことをストレートに言えず、腹話術人形に代弁させる。本音をなかなか他人にぶつけられない現代人の屈折した感情を彼の腹話術が見事に表現していた。