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2010年02月01日 配信
マンガ家とボクサー青年の出会いが生んだカオス。真利子哲也監督の長編デビュー作。(70点)
ボクサーを夢見る青年と、彼をモデルに新作「イエローキッド」を描こうとするマンガ家を主人公に、日常と非日常、愛と嫉妬、現実と虚構が錯綜する物語。監督の真利子哲也は実験的な短編オムニバス映画『そんな無茶な』で、映画製作費100万円をすべて宝くじ購入に突っ込むというドキュメンタリー(?)を撮っている。たまたまその映画を僕は観ていたのだが、作品のタッチとしては今回の映画に似ているところもあるかな……と思わなくもない。手持ちカメラを多用したライトなし撮影は予算の都合で必然的に多用されている手法だとは思うが、これが作り手の個性にまで達すれば、ビデオ時代の新しい映像表現になるかもしれない。現在はまだゲリラ的な撮影のための、荒削りな手法に見えてしまう。屋内シーンなど必ずしも撮影の制約がない部分でも同じ手法を使っているのだから、これは意図的なスタイルなのだが、まだスタイルとしてこなし切れていない。こうした映像が表現として定着してくるには、まだあと数年はかかるのかもしれない。