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人々が身代わりロボット「サロゲート」に自分の体験を代理させることで、「なりたい自分」になれる近未来を描いたSFサスペンス。ブルース・ウィリスの「なりたい自分」がふさふさの金髪というのが可笑しい(71点)
ブルース・ウィリス主演のSFアクションというと、リュック・ベッソンの「フィフス・エレメント」(1997)のような大作を予想するが、本作の上映時間は最近の映画では珍しく1時間29分しかない。ぎりぎり1時間半を切っているのである。CGによる派手な特撮場面もあり、B級というには規模が大きいが、よくある大味なSF大作とは違って、キリッと引き締まった作品になっている。監督はジョナサン・モストウ。「ターミネーター3」(2003)も大作にもかかわらずB級映画的なディテールに面白みのある作品だった。そんなモストウの持ち味が発揮された佳作。
近未来、「サロゲート」と呼ばれる身代わりロボットが開発される。人間は自宅で椅子に座ったまま、すべてをサロゲートに体験させることで、あたかも自分が体験しているように感じられる仕組みだ。代理ロボットだから、どんな外見にも出来るし、事故に遭ったり、犯罪に巻き込まれたりしてもロボットが壊れるだけで本人は安全。人は誰もが「なりたい自分」になることが出来て、事故も犯罪もないというユートピアが描かれる。
その結果、街中、美男美女だらけになってしまうのが可笑しい。FBI捜査官役のブルース・ウィリスが、ふさふさした金髪で登場する。これはサロゲートで、捜査官本人はスキンヘッドなのだが、やっぱりウィリスも頭が気になるのか、などと思ってしまった。サロゲートだから何となく表情が人工的で、人間に限りなく近いのだけれどどことなくロボットに見える。それを生身の役者が演じているのが最大の見所だ。笑いが「張り付いたような笑い」だったり、まばたきが極端に少なかったりする。「ステップフォード・ワイフ」(2004)のような世界がリアルに描かれている。特に、ウィリスの同僚役のラダ・ミッチェルや、ウィリスの妻役のロザムンド・パイクら女優陣は、実際の「人間」の役と、サロゲートの役と、その外見上の落差が激しく、女性は本当に化けるものだと感心してしまった。それは「映画」というヴァーチャル空間での「役」と、女優の実際の姿との関係と同じように思えて、映画の裏側を見るような面白さもある。