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2010年01月26日 配信
中山美穂が12年ぶりに主演し、夫・辻仁成の原作で激しいラブシーンを演じた話題作。イ・ジェハン監督は単なる恋愛映画とせず、中山美穂を戦後日本が失った「夢」の象徴として描いているところがいい(80点)
古いホテルには、「魔物」が棲み着くものだ。
本作は恋愛映画に違いないが、どこかファンタジーのようにも思える。中山美穂が演じる主人公・沓子の存在が、余りに非現実的なのだ。バンコクのオリエンタルホテル(旧ザ・オリエンタル、バンコク)のスイートルームに住み続け、いつまでも男を待っている女。浮世離れしていて、すべて男の幻想ではないかと思えるほどだ。この幻想味こそ、本作の最大の魅力であり、監督のイ・ジェハンはじめ韓国の手練れのスタッフが、すべて中山美穂のために作り上げた仕掛けだ。12年ぶりの映画主演となる中山は、幻想のマジックの中で光り輝いている。
日本が高度成長期から安定成長に入った1975年。タイ・バンコクに赴任した航空会社のエリート社員・東垣内豊(西島秀俊)は、婚約者・光子(石田ゆり子)との結婚を控えているにもかかわらず、現地で出合った謎の女・沓子(中山美穂)と激しい恋に落ちる。沓子はオリエンタルホテルの「サマーセットモームスイート」で暮らし、高級レストランで食事をし、ブランド物を自由に買う。東垣内にも高級車をポンとプレゼントする。そして、過去をほとんど語ろうとしなかった。やがて結婚式の日が近づき、2人は別れた。それから25年後。航空会社の副社長にまで出世していた東垣内は、バンコクでの商談でオリエンタルホテルを訪れ、そこのスタッフとなっていた沓子と再会する。