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2009年12月04日 配信
世界同時不況前からこの映画を作っていたM・ムーアの嗅覚に脱帽。資本主義という怪物の輪郭が見えてくる。
アメリカから「中流階級」が消えている。かつては一家のお父さんたちが工場や事務所で真面目にこつこつ働けば、その収入で妻と子供たちを養えるだけの収入が得られた。郊外の住宅地に新築のマイホームも持てたし、数年ごとに新車を買い換えることもできた。休日には家族揃ってレジャーを楽しむ余裕もあった。子供たちは大学に通うことができたし、病気になれば会社の保険で医療費がまかなえ、定年退職後は手厚い年金制度で現役時代と変わらない暮らしが維持できた。それは特別なことではない。社会の大多数を占める一般庶民は、真面目に働き続けさえすれば誰でもこうした暮らしを手に入れることができたのだ。
だがこうした暮らしは、今や夢のまた夢。企業は国内労働者の人件費が高いことを嫌って、工場を国外に移転させていく。国内に留まる企業は労働者たちの賃金を、海外の発展途上国並みに低くする。これではいくら真面目に働いても、自分ひとりが食べていくのが精一杯。街には失業者が溢れ、保険や年金の制度は崩壊して生活苦が人々の肩にのしかかる。しかしその一方で、大企業のトップたちは庶民が一生かかっても手にすることができないような報酬を、たった1年で稼ぎ出す。アメリカからは「中流」が消えて、ごく一握りの「富裕層」と、それ以外の「貧困層」で構成されるいびつな国になってしまった。