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むらきむら さんプロフィール
映画が好き、映画より本が好き、本より音楽が好き。

高校、大学時代に大好きだったルースターズのボックス・セットに驚いている今日この頃。こんなの買えません。でも欲しいです(全部アナログの世代ですから)。



■過去記事一覧

 

 アルタミラ・ピクチャーズという製作会社がある。表では『ウォーター・ボーイズ』や『スウィング・ガールズ』という最高に面白い作品を生み出しながら、その裏では『タカダワタル的』、『ザ・ゴールデン・カップス/ワンモアタイム』という通好みというか、その筋のオヤジ泣かせの音楽ドキュメンタリーを生み出している。この裏はスタッフの趣味なのかは分からないが、きっとそうなんだろうな。このアルタミラ・ピクチャーズが音楽ドキュメンタリー・シリーズ第3弾として遠藤賢司を主人公とした『不滅の男・エンケン対日本武道館』という凄まじい作品が公開される。作品に関する詳細はこちらに書いたので興味があるなら読んで欲しい
http://www.movienet.co.jp/movie/opus05/fumetsuman/ )。

 遠藤賢司はある世代にとっては「カレーライス」という情緒溢れる曲で知られるフォーク・シンガー、シンガー・ソングライターでしかないかもしれないが、熱狂的なファンにとってはそういった部分を越えたひとりの音楽家、純音楽家である。遠藤賢司は遠藤賢司という、誰も真似できない存在でしかないのだ。

 先にも書いた「カレーライス」という曲でヒットを飛ばした遠藤賢司だが、彼はそれ以降も現在も精力的に音楽活動を続けている。ニュー・ウエーブの波を受け止めた作品を発表したり、ハード・ロック的な作品を発表したりとその内容は変幻自在か、多種多様か。でも、揺るぎない1本のラインがきちんと通っている。それが遠藤賢司は遠藤賢司でしかないという純音楽家としての遠藤賢司を示しているのだ(といっても何のことか分からないでしょう)。だから昔の曲もこだわりを持って演奏する。大体、フォークと思われている彼はその当時からロックという部分での評価を受け続けていた(はっぴいえんどがバックを担当している)。

 僕が生の遠藤賢司に出会ったのは、代々木にあったとあるライブハウス(それ以前は何度かレコードを聞いていた)。元々は確か小岩にあったのだが、それが代々木に移転。このライブハウスが面白かったのはあの頃には珍しくジャンルの垣根を超えたライブを行っていたということ。今では多くの熱狂的ファンを抱える“渋さ知らず”もここでの深夜イベントが柱になっていたはずだし、その頃はまだまだアンダーグラウンドだったDJにも注目し、TOKYO NO.1 SOUL SETもここが活動拠点だったはず。店名もごった煮サウンドの代名詞 Pファンクのアルバムから取られていた。小さいながらも最高に居心地のいい空間だったのだが、その後、下北沢に移転したりしながら、最後はトラブルで閉鎖になったという話だけは耳にした(今でもこのライブハウスがやっていた良質な自主制作レーベルのCDはオークションなどで手に入れることが出来る)。で、そこのオーナーがこのライブハウスを開いた理由が、遠藤賢司が観たかった、やりたかったからだというのだ。もちろん、遠藤賢司はここの常連でとんでもないデザイン(確か60センチ四方のジャケット)のCDなども発売していた。

 始めて生で体験した遠藤賢司は衝撃だった。とにかく強烈な音がそこには存在した。それはエンケン・バンド。ボーカルとギターが遠藤賢司、ベースが元子供バンドの湯川トーベン、ドラムが復活するかしないかの頃の頭脳警察のトシだった気がする。僕自身は中学の頃は子供バンドが好きだったし、頭脳警察がらみではパンタのライブによく脚を運んでいた。トシのイメージはフリー系のロックよりのジャズだった(今でもその感は強い)。その初体験以来、何度も遠藤賢司のライブには通った。イベント的なものもあったが、一番大きかったのはクアトロでのライブだったと思う。

 その頃からすでに10年以上、何の縁があってか、こんな映画らしき仕事をしていて『不滅の男・エンケン対日本武道館』という作品を一足早く観ることが出来、変わらぬ遠藤賢司の姿にやられ、配給会社や宣伝会社の好意で『不滅の男・エンケン対日本武道館』公開記念のライブ“エンケン祭り”の会場である渋谷AXに脚を運ぶことが出来た。

 この日の出演者はもちろん主役の御大 遠藤賢司、元サニー・ディ・サービスという敬称はすでにいらないであろう曽我部恵一バンド、そして書類送検の記憶も新しい銀杏BOYZという遠藤賢司をレスペクトする若手たち。遠藤賢司は僕が観ていた遠藤賢司バンドと若手をバックの従えたフォーピース・バンド エンケン&カレーライスで登場。

 ステージには紅白の幕、会場のモニターでは荒川遊園で優雅に撮影した『不滅の男・エンケン対日本武道館』の予告編(数パターンあるこれが本当におかしい)。最初に登場したのはエンケンひとり。ギターをかき鳴らし「夜汽車のブルース」を歌いまくる。そしてエンケン&カレーライスとして、映画のタイトルでもある名曲「不滅の男」。なんと紅白の幕の後ろからは富士山が登場!会場のボルテージも一気に盛り上がる。若手バンドの特長とも言うべき、音圧をバックに負けじと歌うエンケンは素晴らしい。

 続けて、曽我部恵一バンドの登場。自分のスタンスでやりたいことをやるという気持ちが伝わってくるステージ。若手の中ではもっとも遠藤賢司と交流も深く、MCからもそういった想いが伝わってくる。ただ、曽我部さん、太りましたね。太っちゃロックはやれないぜという誰かの名言もあったけど、ま、いいか。

 この日の多くの観客はこのバンドを臨んでいたのではないかというのが銀杏BOYZ。新聞ざたにまでなった書類送検、ライブでの骨折、そして明日からは完治のために入院というこのライブ。バンドの勢いの凄まじさが出たライブだった。これは若ければライブに通うねと思ったり、ブルーハーツがライブハウスで噂になり始めた頃を思い出したり。何年かに1つのバンドだと確信。ちなみにヴォーカルの峯田は元ゴーイングスティディで映画『アイデン&ティティ』の主役の人。彼の存在が凄いのです。

 ラストは遠藤賢司バンド。ドラムはトシ、ベースはトーベン。貫禄のステージという奴ですか。バーズちっくな「外は雨だよ」が素晴らしかった。あの頃は音圧のイメージが強かったのに、そんなことはなく、体が揺れてしまう。おしまいは全員での「東京ワッショイ」、エンケンは人間神輿で登場。ギターのアンプがいかれてしまったが、もうこれしかないでしょの「ワッショイ!ワッショイ!」の掛け声の中でライブは終了。

 ライブの中で遠藤賢司は自らを「歌う映画監督」などと紹介し、「監督と呼ばれたかった」などと監督をした理由を話したが、その本心は「自分が一番聴きたい音楽を作ってきた。それが一番大変なんだけどね。」という言葉に表れているように“自分が100%納得する作品を作るための”監督であるのだ。だから「編集の最後のひとこままで手を抜かなかった。」というのは彼にとっては当たり前の発言なんだけど、これは映画を観たからこそ、納得できる。非常に繊細な息吹まで伝わってくるのだ。映画はエンケンの武道館ひとりライブを撮っただけかもしれないが、それ以上のものがある。それは今回久々に観たエンケンのライブでも変わらなかった。それが生き様というならそうだろうが、そんなものじゃない。

 「聞け、小泉。今日は純音楽の日だ!」とこの日、この会場で叫んだエンケン。その想いはあの会場の多くの人が抱いたはずだ。そろそろ東京の新宿界隈の映画館では純音楽の日々が始まろうとしている。映画を観て、遠藤賢司という人に出会えてもらえたらと思う。『不滅の男・エンケン対日本武道館』はテアトル新宿でレイトショー公開だ。その心意気に、純音楽映画に触れるためにも「いざ、新宿へ!」

 

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