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試写会など日記 
アーカイブについて
 昨年(2004)の6月から始まった“試写会など日記”。元々はメルマを充実させるための企画として始まったのですが、今ではこれを楽しみにしていてくれる人も多いようで嬉しい限りです。率直な意見が聞けるという声もありますが(ま、そのあたりのことは担当者の心を覗かなければ判らない部分もあるのですが)、希望の多かったこの“試写会など日記”のアーカイブを月別にUPしていきますので、文体の差、手を抜いているな、あの作品をこう思っていたのか、こんな作品があったんだなどお楽しみください(原文は基本的に発表時のままです)。


■過去記事一覧

12月×日 試写に行こうと思ったが、行けずに雑務。夜、うちでビデオを観ようと思ったが、バタバタとして観れず。眠くなったので、少し読書して、寝る。

12月×日 『サンサーラ』の試写。フランスの奇才と呼ばれるジークフリートを主人公に世界中を歩かせることによって描いていく放浪の物語。明らかに手持ちのカメラで主人公に普通の町を歩かせていくことにより撮られていくざらついた映像、きちんとした接続詞のない物語の内容といいアートですね。監督が何を撮ろうとしたのかは、観る側の判断だけど、フランスからヨーロッパを放浪し、ロシア、インド、日本、アフリカそしてヨーロッパへという道程(これがつながりがないような歩き方なんだけど)の中で印象に残るのは国境(検問、パスポート)の存在と各国で監督がとらえていく普通の人々のクローズアップの顔なんだよな。この国境と顔が全てを語っている。僕はクラシックには疎いので良く知らないのだが、準主役(個人的には主人公に重なる存在なんだけど)とも言うべきイヴリー・ギトスというおじいちゃんのヴァイオリニストもすごく印象的。もちろん、音楽も素晴らしい。旅の映画と割り切ることも出来ないし、政治的な映画とも断言できないが、世界を切り取った映画ではあると思う。東京都写真美術館で上映されるのだが、ここは本当に面白い、所謂アート系と呼ばれる作品をやる。これもそんな作品ですね。

12月×日 『陽のあたる場所から』というフランス+アイスランド映画の試写。観終わった後に心に何かが残る映画だった。その何かをどのように説明したらいいのかは分からないけども、与え与えられる絆、信頼とでも言ったらいいのかな。違うか。物語はフランスの精神科の若き女性医師が自分の処方の対象としていた女性患者を追いかけ、患者の暮らすアイスランドまで行ってしまうというもの。医師からすれば、完治していない患者を送り返すのは問題があるという主張がある。でも、彼女が帰った家庭の側にとってはそんなことは問題ではない。そこにある心と周囲の葛藤から生まれる成長の物語と撮ることも出来ると思う。箱庭みたいなアイスランドの町、観光客も来ない荒れた天候の日々、その中で最後にやって来る小春日和のような晴れ間。このシーンが全てを語ってしまったなと思う。それがずっと印象として心に残り続けている。原題は『STRMY WEATHER』、邦題は『陽のあたる場所から』。いいタイトルだね。

12月×日 夜、“ラブ・コレクション”シリーズの1作であるタナダユキ監督の『月とチェリー』をビデオで見る。『タカダワタル的』の監督の作品なんだけど、それはドキュメントだから比較とかにはならないでしょう(それでも彼の魅力は十分に捉えていた)。作品は、男がするエロ話を女性の視点で作ってしまったというのか、とにかく面白い青春映画。大学の官能小説サークルに入った新入生の男の子、その官能小説サークルにはプロで活躍する人もいるという。その人物はなんと同い年の女性だった。彼女に誘われるままに自宅へと向かった彼はそこで初体験。その後は彼女にテクニックを開発されていき・・・・という物語展開、主人公の美人ではないけど強い女の子と弱い男、最高です。シリーズでこれが1番いいよという話は聞いていたのですが、確かに誰が観てもこの作品は面白いと感じるはず。前も書いた気がしますが、この“ラブ・コレクション”シリーズはいい作品が揃っているなと感じます。

12月×日 朝、ビデオで『岸辺のふたり』というデュドク・ドゥ・ヴィット監督のアニメーションを観る。知っている方も多いと思うが、DVDでベストセラーとなっていたわずか8分間のアニメーション作品。これが劇場で公開されるのだ。8分でも本当に詩情豊かな作品。グワーッと迫るものを感じる。併映となるあと2本のショート・アニメはキートンとかのスラップスティックな雰囲気で、『岸辺のふたり』とは違う味わいだが、全てに共通して言えるのは、音楽の使い方のうまさ。特に『岸辺のふたり』はその音楽の使い方がものすごく進歩しているのを感じる。最初はオスカー・ピーターソンのように速く、上手くだったのに、それがセロニアス・モンクのように音と音の隙間の音を探し始めた感じ。分かるかな。

12月×日 風邪を引いてダウン。前日から間接が痛いなと思っていたら、夕方から発熱。
そのまま寝続ける。夜になって、文章少しでも書かないと思い、パソコンへ。

12月×日 『レフト・アローン』の試写。マル・ウォルドンというピアニストがビリー・ホリディに捧げた曲を思いだす人もいると思うが、ここのレフトは“去り、残される”という意味合いと“新左翼”を兼ねた言葉。1部と2部との合計で3時間半近くになる日本の新左翼とは何だったのかを批評家のスガ秀実が識者などにインタビューし、討論しながら探っていくという作品。1部と2部どちらも興味深いのだが1部は日本の“新左翼”の歴史を紐解いている部分もあり、特にためになったかなという感じ。新左翼の学生時代の西部邁の話、柄谷行人の発言など面白いね。2部はスガ秀実の思い込みが空回りしている部分に今の新左翼というものの限界を見た気がした。個人的には分からない部分も多かったが、思う部分もたくさんあった。

12月×日 『永遠のハバナ』というキューバ映画の試写。最初に夜中の灯台の光が映し出され、終わりも夜中の灯台の光という1日の物語である。描かれるのは、ハバナに暮らすいくつもの人生。映画はそんな彼らの働く姿、楽しむ姿を台詞なしに捉えていく。様々な生活、人生。苦も楽もあるけど、それが本当に美しく、心に響いてくる。こういう町と生活の組曲みたいな作品は世界中で、その町にあったテンポで撮られたら面白だろうなと思う。それがこの町なら暮らしたいなという指標になるかもしれない。東京はどのように撮られるのだろうか。

12月×日 『モーグ』の試写。MOOGと書くんだけど、これシンセサイザーのモーグ(昔はムーグと言っていたんだけど)の発明者であるモーグ博士が、モーグについて語った作品。語り口が面白く、ヒッピー精神を持つ科学者のようなんだよね。ただ、話自体は音楽に興味がないと難しいかなと思う。『テルミン』みたいに数奇な運命があるわけでもないからね。でも、楽器が好きだったり、モーグに興味があるなら、楽しめる作品だと思う。リック・ウエイクマン、キース・エマーソン、マーニー・マークなどモーグに関連するミュージシャンも多数出演している。

12月×日 試写に行こうと思ったが、そんな状況ではなくなり、雑務や調整。頭が痛い。

12月×日 『きみに読む物語』の試写。アメリカで何百万部も売るベストセラーとなった恋愛小説の映画化。ある初老の男性が老人ケア施設で女性に物語を語っている。その物語は自分たちが若かりし時代の身分の差を越えた恋の物語だった。そして、その物語は・・・というこの作品、この先のストーリーは読めるはずだ。センチメンタルという言葉がピッタリなこうしたラブストーリーは大仰しくなりやすいのだが、この作品は物語のゆったりとしたテンポとそれを演じる役者のうまさで、物語にのめりこませていく。1940年代のアメリカのよき時代から現在まで続くラブストーリー。純愛ばやりだから、そういう枠にカテゴライズされるだろうし、それは間違えていない。でも、ここにはアメリカの“グッド・タイムス”と呼ばれる時間が見事に描かれている。語り口で、それを演じる役者で物語りにのめりこませていく良作だと思う。監督はニック・カサヴェデス。親父とは違うタイプだけど、いい監督になったなと思う。帰りに配給宣伝の人間が「地味ですけど」という言い方をしていたけど、確かにそういう見方もあるだろうが、すごくいい作品なんだから、地味なんてないと思うんだけどね最期に分かっていても湧き上がるものも地味なのかね。地味という一言で片付けられる作品が本当に多いんだよね。

12月×日 『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方』の試写。ピーター・セラーズの伝記的映画。ピーター・セラーズ、ある程度の年齢の方ならご存知でしょう。『ピンク・パンサー』シリーズのクルーゾー警部、『博士の異常な愛情』の博士など、イギリスが生んだ名優で性格俳優です。作品はそんな彼の生涯を彼のエキセントリックさ(こういうのは役者なんかはみんなあるんだろうけど)、出演した作品のシーンなどを織り交ぜながら綴って行く。僕は作品は知っていても、彼自身についてはほとんど知らなかったので、結構驚く部分も多かったが、映画自体はピーター・セラーズと映画に対する愛情に溢れたものとなっていて、存分に楽しめた。ピーター・セラーズという人物を描きながらも、ピーター・セラーズを知らない人が見ても楽しめる人間ドラマに仕上がっているし、間違いなくオリジナルの彼の作品が見たくなる作品になっている。これは映画が好きというなら、必見の作品だと思う。とにかく面白く、切ない。ピーター・セラーズを演じるジェフリー・ラッシュがとんでもない快演!シャーリーズ・セロンもいいです。正月第二弾はいい作品が多いね。

12月×日 『エメラルド・カウボーイ』という作品の試写。南米のコロンビアはエメラルドの産地で、そこのエメラルドで大きな財を成した日本人 早田英志という方の半生を描いた作品。自らが監督、脚本、出演もしているというとんでもない作品。でも、結構面白い。成功した自らの人生を悪く描くはずもなく、「あいつこそサムライだ」なんて台詞を言わせたり、娘がハーバード大学に入学などという部分もあるんだけど、なんというのかな、山師のように過酷な状況を生き抜いてきた様、人生の面白さが良く分かるし、コロンビアの状況のひどさも伝わってくる。特にオープニングで銃を腰に挿すシーンなんかすごく説得力がある。回想シーンでは早田さんの若かりし日がいきなりラティーナになったりして「あれ」と思うのだが、それでも映画自体はこの回想シーンが最もまとまりがあり、ちょっとマカロニウエスタン的でおもしろい。それが現在の状況になり、早田さんが自ら主役となるところで面白さが半減してくる。でも自分でお金出して作った映画だからいいんだよね。しかも、いろんな意味で楽しめるんだし。結構、人に勧めたくなる作品です。
  夜は『スパイ・バウンド』の試写。モニカ・ベルッチとヴァンサン・カッセルの夫婦共演が話題のスパイ映画。この作品はフランスのスパイによるグリーンピースのボートの爆破事件をモチーフにしているという。作品ではグリーンピースも出てこないし(武器商人に置き換えられている)、事件の記憶はなんとなくあってもこの作品と結びつけることは出来ないが、フランスでは公開されるとすぐにこの事件のことが話題にのぼったという(作品を観るに当たって、この辺のことは大きいかなと思う)。物語は政治的な打算により、切り捨てられようとするスパイを描いた作品だ。スパイ映画としては派手さがない分、端々に現実感がほとばしっている。僕自身はそういった部分をものすごく面白いと感じた。終わり方からは続編も期待できるので、そっちも観たいなと思う。大作ではないが、ぴりぴりとした緊張と現実感で個人的には結構楽しめた作品だった。

12月×日 井筒監督の最新作『パッチギ!』の試写。今回の作品は『ガキ帝国』とかの青春喧嘩路線。舞台は1968年。いきなり、オックスのライブのシーンから始まり、毛語録のあの赤本とか出てきて、どうなるんだろうと思うんだけど、井筒路線は快調でした。今回は在日朝鮮人学校と普通の日本の高校の男の子との交流を中心に様々な物語が内包されている群像ドラマというべきものでもあるんだけど、時代背景の入れ方、そこに込めた意図、素晴らしかったです。最後は感動という正に井筒監督らしい展開。どうしても村上龍原作の映画化『69』と比べたくなるのだが、その時代を生きてきた井筒監督とその時代を生きていないので、あえて小説の持つ暗い側面を徹底的に排除した『69』という見方が出来ると思う。個人的には『パッチギ!』の方が好きですね。いろんな面で井筒監督の想いも出ているし。本当に正月第二弾は粒揃いだ。

12月×日 ソフィア・ローレンの100作目の作品『微笑みに出逢う街角』の試写。ソフィア・ローレンはピーター・セラーズの伝記映画『ライフ・イズ・コメディ』でもセラーズが惚れる相手として出てくるのだが、すでに70歳だというのに美しいですね。作品自体は、ソフィア・ローレン、ミラ・ソルヴィーノ、デボラ・カーラ・アンガーという女性3人がそれぞれの新たな生き方を見つけていく群像劇。女性が観ると違うんだろうが、僕自身は今ひとつだった。監督はソフィア・ローレンの息子で、これがデビュー作である。デビュー作とは思えない手堅さがある作品ですね。

12月×日 一日中雑務。試写にも行きたかったのだが、行けず。

12月×日 『TAXI NY』の試写。リュック・ベッソン制作による人気シリーズのハリウッド・リメイク版。フランス版との大きな違いは、女性が前面に出ていることだろうか。タクシー運転手はクイーン・ラティファ、強盗団はスーパーモデル ジゼルなど最高のルックス&スタイルの面子である。話自体はアメリカ的なギャグに大笑いし、カーチェイスに興奮しというノリで問題なく理屈ぬきに楽しめる作品に仕上がっている。正月ボケした頭にはこういう作品は最高だと思うのだが、どうなんでしょうか。

12月×日 『ビューティフル・デイズ』というインドネシアで大ヒットした友情と初恋の物語。主人公は17歳の女子高生。壁新聞部の仲間とは生涯の友情を誓い合っている。そんな彼女がある男の子に恋をしてという物語。インドネシアの高校生だろうが、日本だろうがそういった気持ちは変わらないし、ロックや好きなものに囲まれた生活も変わらないんだよなと感じる。個人的にはこういった女の子の友情が理解できないのだが、それでも日々の楽しい気分などが伝わってきて好印象。主人公が恋する男の子も一匹オオカミ的な存在で「あ、こういう奴いたよな」と思ったりする。甘ったるすぎる部分もあるんだけど、こういう気分てあったよねと思わせてくれる作品。
  夜『YUMENO-ユメノ-』をビデオで観る。ピンク映画で2本の秀作を撮っている鎌田義孝監督による一般劇場デビュー作。冬の北海道を舞台に、金のために衝動的に殺人を犯した青年、その青年に家族を殺された日常に展望のない女子高生、将来を見切っている小学生という3人の登場人物によるロード・ムービー。相当に重いテーマなのだが、最後に希望が提示される部分が良かった。これはいい作品だと思う。

12月×日 体調が最悪。その上、バタバタバタバタ、試写に行こうと思うが全く身動きがとれず。遅くに帰宅して、すぐに眠る。 

12月×日 体調は相変わらず良くない。試写を観るなら、年内はこの日が最後なのだが、身動きがとれず。問題は何とか片付く。さすがに疲れきる。

12月×日 年内最後の会社。年賀状書きやらの野暮用に追われて、終る。仕事が終って、飲み会に向かう。

【余談】
  この2004年12月に観た作品で最も印象に残っているのは『月とチェリー』、『永遠のハバナ』、『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方』、『パッチギ!』。『永遠のハバナ』は思わぬロングランヒット。紹介した側として嬉しかった。『ライフ・イズ・コメディ! ピーター・セラーズの愛し方』もドラマとして面白かったね。エンディングが印象的だった。『パッチギ!』は日本の映画賞を独占しているが、井筒監督は自分のやりたいことをきっちりとやっていく監督だなと改めて感じる。色んなオファーはあるだろうと想像できるけど、そこに揺れない人なんだよね。だから、あるレベルの作品を送り出すことが出来るのだろう。『レフト・アローン』は雑さが目立つが、本を読むよりは分かりやすく、ためになった。ただ、後半は疑問かな。『きみに読む物語』は大ヒット。感動作なんだけど、これみよがしでない流れのうまさがあったオールドスタイルな作品ですね。映像の美しさは絶品だった。『サンサーラ』は感触が甦ってきたので見直してみたい。

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