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試写会など日記 
アーカイブについて
 昨年(2004)の6月から始まった“試写会など日記”。元々はメルマを充実させるための企画として始まったのですが、今ではこれを楽しみにしていてくれる人も多いようで嬉しい限りです。率直な意見が聞けるという声もありますが(ま、そのあたりのことは担当者の心を覗かなければ判らない部分もあるのですが)、希望の多かったこの“試写会など日記”のアーカイブを月別にUPしていきますので、文体の差、手を抜いているな、あの作品をこう思っていたのか、こんな作品があったんだなどお楽しみください(原文は基本的に発表時のままです)。


■過去記事一覧

6月×日 すごくいい天気。昼から『地球で最後のふたり』の試写。浅野君がベネチア国際映画祭で主演男優賞を受賞したタイと日本の合作映画。従来の浅野君とは違う乾いた演技が印象的。映画もタイのバンコクが舞台なのにその浅野君の乾いた印象のままのうだるような暑さ感じさせない青みがかった映像がなんともいえなかった。タイ語が話せない浅野君と日本語が話せないタイ人女性との拙い英語での会話も印象的だった。
軽く腹に入れて、続けて『ある日、突然』というアルゼンチン映画。これはもろヌーベルバーグ的な作品。話の内容よりも音楽とモノクロですっ飛んだ白と粒子加減の映像が心地よい。こういう映画が出てくることにちょっとうれしい驚きを感じる。低予算なのにこんなに撮れるんだよね。

6月×日 映画を観終わった後に、原作があるなら読みたいなと思わせる作品がある。その理由は映画に惹かれた場合もあるし、映画の不足感を補う場合もある。どちらも映画の内容になんらかの魅力を感じていることは確かなのだが。この日試写を観た『天国の青い蝶』は後者だった。いい作品なんだけど、どうも違和感があるんだよね。

6月×日 梅雨空。低く重い空だね。昼から『好きと言えるまでの恋愛猶予』の試写。舞台が1966年から67年にかけてのフランス。物語は一目ぼれした子になかなか好きと言い出せないプレイボーイの話なんだけど、ファッション、音楽など風俗映画として秀逸だなと感じる。サガン、ゴダール、プラトン、ニーチェなどなどすべて記号だね。オープニングに出てくるWHOの「リリーの面影」のEPジャケットや音楽など当時のイギリスの影響をすごく感じさせる。このあたりは面白いね。夜は自宅で『猫は、なんでも知っている』のビデオを見る。ダメ男のロマンチック・コメデイーなんだけど行動派のダメ男でそのひたむきさにちょっと感じ入ったりもする。展開もスピーディーで面白い。

6月×日 一体、年間何本の映画がこの日本で公開されているのだろうかと考えることがある。正確な数は調べればすぐに分かるんだろうけれども、毎週の作品だけで10本位あるのだから気の遠くなるような数だ。これをコンプリートに観ることなんて完全に不可能だし、レンタルで観ようと思ってもその辺には置かれていない作品がほとんどだし、目に触れないまま、消えていく作品ばかりだろう。今日は『プッシーキャット大作戦』という60年代テースト満載の作品の試写。個人的にはリアルタイムのネオ・GS(好きじゃなかった)、和田アキ子なんかを思い出したのだが、この作品を観終わって、そんなことをつい考えてしまった。

6月×日 また台風が来ているとかでどしゃ降り。昼から『ぼくセザール10歳半1m39cm』(長いタイトルだ)の試写。面白い。自分が子供の頃に感じていた大人への疑問、不信、自分自身の勝手な思い込み、それと今考えればどうでもいいようなコンプレックスをうまく描いている。笑いながら納得したり、ちょっとうるっときたり。これは誰が見ても面白いと思うはず。面白かったと宣伝の人に伝えたかったのだが、会社に戻ってやることがあったのですぐに電車へ。しかし、ここの試写室はすごくいい。はじめて来たけど、びっくりしました。夜はうちで『ハナのアフガンノート』のビデオを見る。イラン映画のマフマルバフ一家の末娘ハナ13歳のデビュー作品。、元々はお姉さんの作品『午後の5時』のメイキングとして企画されたものだが、メイキングではなくキャスティングからアフガニスタンの人々、風景を捉えたきちんと独立したドキュメントとに仕上がっている。すごく面白いです。

6月×日 昼からフランス映画『歌えジャニス・ジョプリンのように』の試写。これは面白いや。ジャニスとジョン・レノンを神のようにあがめるいっちゃっている男からお金を巻き上げるために、ジャニスとジョンの偽者を作り上げというコメディータッチの作品なんだけど、ジャニス、ジョンになった人物が入れ込んでいく様子、あがめる男の変化などいいね。ロック好きならより楽しめるはず。しかし、よくこんな企画に許可が出たなと思ったのだが、これオノヨーコとジャニスの妹もきちんと協力しているらしい。最近は平和の押し売り的なキャラクターで語られがちだったオノヨーコだけど、こういう企画に協力するとはなかなかのもの。

6月×日 昼から『ソウル・オブ・マン』と『ロード・トゥ・メンフィス』というこの夏にまとめて何本も公開されるブルースもののドキュメントを観る。前者はヴェンダース監督で、ブラインド・ウイリー・ジョンソン(『パリ・テキサス』のライ・クーダの印象的なスライドギターの曲の元の方)、スキップ・ジェームス、JB・ルノアーというブルースマンに関するドキュメント。後者はリチャード・ピアーズ監督でBB・キング、ボビー・ラッシュ、アイク・ターナーなどが出演したブルース、ソウルの聖地メンフィスと全米をバスでツアーする日常を捉えたドキュメント。僕にとってはどちらも至福の作品。10年ほど前に見たアイク・ターナーの雄姿を思い出しました(この間は薬の問題で入国拒否されてしまったが)。音楽好きなら必見。『ロード・トゥ・メンフィス』ではプレスリーの話(これが笑える)が少し出てくるんだけど、そこしか語れない映画評論家(ライター)ばかりにみえたのはちょっと残念(それは仕方ないか)。

6月×日 昼から『ゲート・トゥ・ヘヴン』の試写。『ツバル』のファイト・ヘルマー監督の新作。空港を舞台にそこで働く移民やら不法入国者やらを主人公としたコメディータッチのドラマ。インド映画的な要素も盛り込みながら展開していく話は、空港の迷路のような裏側や出てくるキャラクターなど面白さがあるんだけど、全体として詰め込み過ぎゆえの物足りなさも感じてしまった。空港の裏側が舞台という部分では『パリ空港の人々』を思い出しました。スピルバーグの新作も確かそういう話ですね。

6月×日 暑い。また台風が近づいているとか。昼から『コウノトリの歌』の試写。ヴェトナム戦争を描いたヴェトナム映画。一方の当事者としてのアメリカが描くヴェトナム戦争の映画は山ほど見たが、もう一方の当事者であり、最大の犠牲国でもあるヴェトナムが描くヴェトナム戦争の映画を観るのは初めてだ。最初にこの戦争での両国の死者の数が出るのだが、それだけで驚きだ。知っているようで知らなかった。そして物語はそんな戦争を生き残った男が現代からあの戦争で知り合った男性、女性兵士を回想していく形で進んでいく。それは生き残った自分、今の時代に対する問いかけである。テーマがものすごく良質で重い。でも、見るべき作品だと思う。映画の内容をはるかに超えた問いかけに考えさせられる。

6月×日 午後からジャック・リヴェット監督の新作『Mの物語』。主演はエマニュエル・ベアール。相変わらずのゆったりとしたテンポで進む彼の新作は、少し眠くなってしまうんだけど、魅力的だな。話も切なくていいです。僕はリヴェットが好きなので、本当に良かった。

6月×日 デンマークのアニメーション作品『白くまになりたかった子ども』。この作品は話ももちろんだが、それ以上に絵が素晴らしい。まるで絵本を1ページごとに切り取って、貼り付けていったかのような絵柄と色彩に完全にほれ込んでしまった。こういう色使いは計算して作ろうと思っても出来ないもの、もって生まれたものだろうなと思う。字幕も少なく分かりやすいのだが、子供向けに吹き替え版もあればと感じてしまった。大人も楽しめるアニメということで、そこだけに留めるにはもったいないな。絵本も晶文社から発売されるらしく、それも楽しみ。

6月×日 『カタルシス』という少年犯罪の加害者家族の出所後の生活を描いた作品が印象的だった坂口香津美監督のデビュー作『青の塔』。ここでのテーマは引きこもり。文学的な語りや、物語の展開などに「うーん」という部分を感じながらも、約2時間半という長い時間を引き込まれるように観てしまった。こういう作品を魅力的というのは間違えてるかもしれないが、引き込ませずにいられないリアルな部分があった。これがデビュー作とは。この監督は次の作品にも大いに期待しています。

6月×日 『トッポ・ジージョのボタン戦争』の試写。市川崑監督が1967年に撮った幻の作品。トッポ・ジージョは知っている人は知っているだろうけれどもイタリア生まれのネズミのキャラクターだ。このキャラクターを主役に市川崑監督が描くのはパペットと人間によるドラマだ。ジージョの視点で映し出すこの世界となんともいえない話の展開、スラップスティックさとシュールさが面白く、お洒落でもある。こういう冒険心に溢れた作品を堂々と撮ること、公開することが出来た時代があったんだなと感じる。フィルムがないのがいろんな意味でちょっと残念。

6月×日 マイケル・ウィンターボトム監督の新作『CODE46』の試写。彼のフィルム・プロダクションの名は“レヴォリューション・フィルムズ”というんだけど(赤い星がシンボルマーク!)、その名の通りの活動をしてるなと改めて思ってしまった。舞台は近未来、SFという設定だが、根っこのテーマは現代に通じてしまうこと。『イン・ディス・ワールド』、『24アワー・パーティ・ピープル』など彼が今までに撮ってきた作品からきちんと連なるテーマを持った作品。映画の内容は本当に素晴らしい。元クラッシュのミック・ジョーンズが“Should I Stay or Should I Go”を歌っていたのにも笑いながらも涙。イギリスという国が抱えていた状況をバックに生まれたパンクの精神をきちんと受け継いでいる監督の精神には本当に勇気付けられる。

6月×日 ロバート・アルトマン監督の『バレエ・カンパニー』の試写。アルトマンの作品として観ると相当に物足りなさが残るのだが、バレエが好きなら楽しめるだろうなという作品。バレエはクラシックよりモダンの部分が多かったので、そこは個人的に楽しめた。音楽はヴァンダイク・パークスが担当。コステロやチェット・ベイカー、リー・ワイリー、クロノス・カルテットなどによる“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”が繰り返し使われる。公開される劇場などを考えると間違いなくヒットするだろうが、バレエに興味がなかったり、アルトマンということで大いに期待をすると肩透かしになるかもしれない。

6月×日 『怪談新耳物語 劇場版』の試写。この作品のテレビ版は観たことがないのだが、劇場版を観る限り、面白そうだなと感じる。8本のオムニバスである劇場版の内容は統一感に欠けるところもあるのだが、それは原作のテーストをきちんと汲んでいるともいえるだろう。ホラーではあるが、不可思議な物語といった感が強い。オリジナルも観たくなった。

6月×日 『16歳の合衆国』の試写。殺人を犯した16歳の少年の心のありようや行動を描いた作品。製作にかかわったケヴィン・スペイシーも出演している。『エレファント』(個人的にはもっとそぎ落とすべき作品だと思っている)が淡々と殺人事件のあった高校の1日を追ったのに対し、これは塀の向こう側に入り、カウンセラー的な教師に心を開きながら、話していく少年の話でつづられていく。彼の周囲にいる壊れた関係で日々を過ごす大人たち、彼の若さゆえの傲慢さ、そういったものが染み渡ってくる。まっとうなようで完全に壊れているアメリカの家庭を描いてもいる作品だ。あまり受け入れられるとは思えないが、これも本当に素晴らしい作品だ。

【余談】
  この2004年6月に観た作品で最も印象に残っているのはアルゼンチン映画『ある日、突然』とマイケル・ウィンターボトムの『CODE46』。どちらも興行的にはいまひとつみたいだったらしいけど、勢いと斬新さが光る前者、近未来を描きながらも現代に通じた物語である後者は色々と考えさせられるものがあった。多少の間延びは感じられたが『コウノトリの歌』というヴェトナム映画、ありがちな作品かもしれないが『16歳の合衆国』、『ハナのアフガンノート』なんかも考えさせられるいい作品でした。“ブルース・ムービー・プロジェクト”の作品群は音楽好きなので物足りない部分も感じながらも十二分に堪能。『歌えジャニス・ジョプリンのように』もロック好きなら必見な面白さなんだけどな。

 

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