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■電気羊プロフィール
アニメーター、編集者を経て現在はフリーライター兼翻訳者のハシクレをしている。好きな映画は「ブレードランナー」、好きな役者はコリン・ファースと嵐寛寿郎。だんなについて、目下カリフォルニア州サンタクルーズに滞在中。せっかくなんで、コミュニティ・カレッジに通いつつ、映画三昧している。この度3年越しの夢が叶い、コリン・ファース主演作「フィーバー・ピッチ」で字幕翻訳家デビュー! 趣味はスキューバダイビングとビリヤード(どっちも超ヘタ)。日本から連れてきた耳垂れウサギを飼っている。


■過去記事一覧



写真01
『Vフォー・ヴェンデッタ』
ポスター

写真02
Vのマスク&MiIIIのキャップ
(欲しくない)

写真03
.『インサイド・マン』ポスター

写真04

サンノゼ映画祭での
『Walkout』の監督
E・J・オルモス

カリフォルニアはサンタクルーズから、毎月最新ホヤホヤの映画情報をお届けする「もぎたて映画通信」。第22回は、いずれ劣らぬ話題作2本と、チカノ・パワー炸裂ムービー1本をご紹介。

☆『Vフォー・ヴェンデッタ』 V for Vendetta

全体主義国家と化した2020年のイギリスを舞台に、サトラー議長(ジョン・ハート)率いる独裁政権にたった一人で闘いを挑む正体不明のヒーロー、Vの活躍を描く近未来アクション。

『マトリックス』の製作チームが関わっていることと、ナタリー・ポートマンが丸坊主になる本番シーンがあること以外、ほとんど予備知識なしで、たいして期待もせずに行ったのですが、これが予想を裏切る気骨のある映画でした。

正確に書くと、監督は『マトリックス』で助監督をつとめたジェームズ・マクティーグで、ウォシャウスキー兄弟は、脚本と製作を担当。でもファイナル・カットはファースト・タイマーのマクティーグではなく彼らがやったそうです。原作は、『リーグ・オブ・レジェンド』のアラン・ムーアのコミックですが、ストーリー担当のムーアは映画には関わりたくなくて、本作からクレジットをはずさせています。反対にイラスト担当のデイヴィッド・ロイドの方は、積極的にインタビューなどに応じて宣伝に協力しています。

主役のVは、全編マスク(ガイ・フォークスのマスク。Vは国会議事堂を爆破しようとして果たせなかったフォークスのお鉢を継ごうとしている)と黒装束に身を包んでいるので役者が分からず、ずっと「誰だろう?」と思いながら観ていたのですが、正体はヒューゴ・ウィーヴィングでした。いわれてみれば、あの声は確かにエージェント・スミス。白黒映画『巌窟王』のロバート・ドーナットの振り付けに合わせて剣を振り回したり、さらってきたイヴィー(ポートマン)にエプロン姿で朝食のトーストを焼いてあげたりと、なかなかおちゃめなところが素敵です。

驚いたのは、大作アクションらしからぬキャスティングで、スティーヴン・レイ、ルパート・グレイヴス、スティーヴン・フライという英国俳優の曲者たちが、結構大きな役を与えられています。スティーヴン・レイをなかなかうまく使いこなしていてくれて、うれしい(^_^)。フライは、「公」は華やかなのに「私」は日陰者の悲哀を、『オスカー・ワイルド』に続いて体現していました。ちなみに今年の英国アカデミー映画賞の司会は彼が務めたのですが、非常にウィットに富んだクレバーな司会ぶりで、米アカデミー賞のジョン・スチュワートの向こうを張っトいました。Vは、最初はジェームズ・ピュアフォイが演じたのですが、台詞回しがどうもイマイチということで、ウィーヴィングに交代したそうです。Vは顔が見えないので、文字通り声がモノをいいますからね。その点ウィーヴィングは声に人を幻惑させる力があるのが、今回よくわかりました(それは顔を見なくていいからってこと!?)。

Vの正体を含め、裏読みをさせてくれる相当屈折したストーリーも気に入りましたが、何よりモンタージュを多用した編集の妙と、長剣や短剣を使ったアクションのシャープな映像スタイルを堪能しました。ドミノ倒しのアイディアも利いてます。映像も思想も、ポスト9/11を自覚した同時代性を感じさせる割に、敵の表現が紋切り型で古くさいのは、これも意識的に『1984』をなぞっているからでしょう。ジョン・ハートだし。原作では、独裁国家のモデルは当時のサッチャー政権なのだそうです。

評価は、ベタぼめしているのと、けちょんけちょんに貶めているのと、かなり両極端です。そもそも、V自身が両義性を体現していて(政治的なだけでなく、たぶん性的にも)、その動機は革命でもありヴェンデッタ(復讐)でもあり、歴史的な建造物の国会議事堂を爆破しちゃうのは、ガイ・フォークスうんぬんのお題目があるにしても、美を愛でるVらしからぬ行為で、カタルシスよりは喪失感を覚えるはずです。観てる方は、ヒーローとして手放しで応援していいものかどうか複雑な心境になりますが、V本人が葛藤する描写は入れず、代わりに彼が悩むのは、イヴィーへの屈折した愛情。このへん『オペラ座の怪人』が入ってます。面白いのは、イヴィーを演じるナタリー・ポートマンへの評価も、映画肯定派は絶賛し、反対派はけなしているところ。(丸)坊主憎けりゃ…?

☆『インサイド・マン』Inside Man

問題作担当インディ派監督の雄、スパイク・リーが撮った初のメジャー・アクション大作。『マルコムX』など、リー組のデンゼル・ワシントンが出ているのはいいとして、スリリングなのは、ジョディ・フォスターが共演していること! リー&ワシントンとジョディ・フォスター! なんつー意外な取り合わせ! それだけでワクワクしまんか?

ニューヨークのウォール街で白昼堂々、銀行強盗が発生した。犯人一味は、映画の冒頭で「銀行強盗の理由? 私には可能だからだ」とカメラに向かってうそぶいてみせる、ダルトン・ラッセル(クライヴ・オーウェン)率いるわずか4名。迎え撃つのは愛GF家のネゴシエイター、キース・フレイジャー刑事(デンゼル・ワシントン)。強盗の知らせを聞いてあわてた銀行創立者のアーサー・ケース(クリストファー・プラマー)は、マデリン・ホワイト(ジョディ・フォスター)を呼びだし、彼の貸金庫の中味を誰にも見られないように回収する任務を与える。行員と顧客を人質に取り、自分たちと同じ服装にして犯人と人質の見分けをつけなくするという工作をしたうえで、銀行に立てこもった強盗一味に勝算はあるのか? 百戦錬磨のフレイジャーは、犠牲者を出さずに彼らを逮捕できるのか? そしてコブラとマングースのにらみ合い状態の中、ジョディちゃんはどんな手を打つのか!?

ジョディちゃんの肩書きはパワーブローカーとなっていて、ビジネス上のトラブルを解決する仕事人みたいな人らしいのですが、とある評論家が『レザボア・ドッグス』のミスター・ホワイト(ハーヴェイ・カイテル)みたいな役どころ、と表現していたのがピッタリです。出番は少ないけど、デンゼル対ジョディ、オーウェン対ジョディ、プラマー対ジョディと、2勝1引き分けの立派な対戦成績をあげます(^_^)。ほかに、警官チームの一人でウィレム・デフォー、デンゼルの相棒役で『堕天使のパスポート』が印象的だったキウェテル・イジョフォーが出演しトいます。

強盗事件の進行と同時に、デンゼルによる人質たちの取り調べシーンが差しはさまれ、時間軸を錯綜させながら徐々に事件の行方と全ぼうが明らかになっていく展開はみごとで、もう座席に釘付けです。デンゼル扮するフレイジャー刑事は酸いも甘いもかみ分けたユーモアを解する苦労人という設定で、セリフごとに観客の笑いを誘っていました。照明を落とし、モノトーンな色調に抑えた取調室での尋問は、人質と犯人の区別がつかないためにおのずと緊迫したものになり、終始ひょうひょうとした態度をくずさないフレイジャーの存在が、緩急の絶妙な味つけになっています。人質にはいろんな人種がいて、ターバンを返してくれと頼むシーク教徒からヨーロッパ系移民から黒人からアジア人まで、ほぼ網羅しています。人種のるつぼたるNYの土地柄を生かした外国語ネタも、ちょっと脱線気味だけど面白いです。人質に、一人黒人の男の子がいるのですが、その子が持っているゲームの暴力性に鼻じらむ頭脳派強盗のオーウェンが印象的でした。ほぼ全編顔を隠し、大衆に自分と同じ服装をさせるというヴィジュアル・プロットが、『Vフォー・ヴェンデッタ』と奇妙に符号します。音楽がたいそう大げさで、ジャンル・ムービーをからかっているような気がするのが、ちょっとマイナスかな。

☆『Walkout』

これはHBOで放送されたTV映画ですが、監督したエドワード・ジェームズ・オルモスによれば、今後(オルモスみずからフィルムを持ち歩いて(^_^))劇場公開もしていくそうです。

1968年に起きた実話を元にしており、当時のヒスパニックへの差別的な教育体制に抗議して、Walkout(授業をボイコットしてデモをする)をした高校生たちを描いた社会派ドラマです。主役である優等生のポーラを、『スパイキッズ』のアレクサ・ヴェガがたいへん好演しています。撮影当時、ちょうど16才とのことで、『スパイキッズ』からは想像も出来ない、たいへんういういしく清純な魅力が光っていました(正直地味な役を手堅くこなす彼女の演技力にびっくりしました)。

日本でどれぐらい伝わっているかわかりませんが、アメリカではちょうど現在、不法移民の取り締まりを強化する法案をめぐり、各地で学生を中心としたWalkoutが行われ、特にここカリフォルニアはメキシコ移民が多いので、まるでこの映画を再現したかのような様相が各市で展開しています。大事を取って休校にしている高校も出ており、毎日ラテノパワーを肌で感じています。実際農作業などは完全に彼らに頼っていて(不法、合法に限らず)、とある地元のイチゴ畑の農業主は、もし法案が通れば、アメリカではイチゴの値段が法外に上がるか、市場から国Yイチゴは消えてなくなるだろう、と言っていました。

閑話休題。私がこの作品を観たのは、サンノゼ映画祭Cinequestでした。今年のMaverick Spirit Awards賞をオルモスが受賞し、受賞式典の場で、TV放映に先駆けて上映されたのです。オルモスといえば、日本では『ブレードランナー』のガフ役の印象ぐらいしかないかもしれませんが(私だけ?)、実はヒスパニック社会の地位向上に努める活動家で、彼らの間では大変尊敬されています。去年受けたスペイン語クラスの教科書にも載ってました。『ブレードランナー』以外では、メキシカンの有名な舞台作家ルイス・ヴァルデスと組んだ『ズートスーツ』と、『落ちこぼれの天使たち』は押さえておきたいです。熱気あふれる会場で観た本作は、最初は「カメラアングルが甘いな、ふっ」とか斜に構えて観ていたのですが、どんどんアレクサちゃんの好演に引きこまれ、最後には知らず知らず、のど元から熱いものがこみ上げてきました。

ところでオルモスといえば、何といっても今ホットな話題はSci-Fiチャンネルのリメイク版『バトルスター ギャラクティカ』。2シーズンを終えたばかりの本シリーズで、ギャラクティカの艦長役を務めるオルモスは、この番組をたいそう誇りにしているようで、熱く語っていました(オルモスはむちゃくちゃ話上手です。活動家でありながら、彼ほど矜持のない態度と話しぶりをする俳優は見たことがありません。彼がシュワちゃんに対抗して州知事に出馬したら勝っちゃうかも!?)。そんな立派なオルモスですが、満場の拍手を浴びる彼を横目で見ながら、「でもガフだよ!?」と思わずにはいられない、ブレラン信者の電気羊でした(^_^;)。

ああ、書いてるそばから下の時計塔で学生たちがデモしている…。

ぢゃ、また来月(あたり)。
(Mar.31 2006)
電気羊

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