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■電気羊プロフィール
アニメーター、編集者を経て現在はフリーライター兼翻訳者のハシクレをしている。好きな映画は「ブレードランナー」、好きな役者はコリン・ファースと嵐寛寿郎。だんなについて、目下カリフォルニア州サンタクルーズに滞在中。せっかくなんで、コミュニティ・カレッジに通いつつ、映画三昧している。この度3年越しの夢が叶い、コリン・ファース主演作「フィーバー・ピッチ」で字幕翻訳家デビュー! 趣味はスキューバダイビングとビリヤード(どっちも超ヘタ)。日本から連れてきた耳垂れウサギを飼っている。


■過去記事一覧



写真01
「Fever Pitch」ポスター

写真02

「SIN CITY」ポスター


写真03

「銀河ヒッチハイクガイド」
ポスター

写真04
「銀河ヒッチハイクガイド」の
コアな親父

写真05
「銀河ヒッチハイクガイド」の
コアな親父2

写真06
「銀河ヒッチハイクガイド」の
コアな親父3

写真07
「ザ・インタープリター」
ポスター

写真08
ちなみに「ぼくのプレミア
ライフ」のジャケット

カリフォルニアはサンタクルーズから、毎月最新ホヤホヤの映画情報をお届けする「もぎたて映画通信」。第13回は、個人的に思い入れの深い映画のリメイク作から、コミックの映画化として画期的なスタイルを創りあげた1本、そして愉快なスラップスティックSFコメディと、イチオシ映画のメジロオシだ!

☆"Fever Pitch"

「アバウト・ア・ボーイ」「ハイ・フィディリティ」のニック・ホーンビィ原作、コリン・ファース主演で1997年にイギリスで製作された映画「ぼくのプレミア・ライフ」(原題は"Fever Pitch")のハリウッド・リメイク版が、公開されました(オリジナル版DVDはコロムビアMEより好評発売中!字幕は電気羊が担当しました(^_^))。

23年間、地元のスポーツ・チームを応援し続けてきた熱狂的なファンが、恋人とチームの板挟み(?)にあって悩む、というシチュエーションだけをオリジナルから借用して、あとはほとんど違うストーリーになっています。まず、主人公の応援するチームがプレミアリーグのアーセナルからプロ野球のボストン・レッドソックスに変わり、ヒロインが主人公の同僚の女教師という設定から、バリバリのキャリアウーマンへ、そしてとっつきにくい性格だったのが、演じるドリュー・バリモアのキャラクターに合わせて明朗快活で親しみやすいアメリカン・ガールになってます(犬も飼っている)。バリモアはプロデューサーも兼任しています。

ほとんど別物といっても、いくつか同じセリフを使っている箇所もあり、2人がケンカして、主人公が恋人に「君は23年間もずっと夢見てきたことがあるか?」っていうところや、ヒロインの女友達が、「彼氏に洗脳されるわよ!」って忠告するところなどはオリジナルと同じです。もうひとつ、予告編ではヒロインが「たかがゲーム!」っていうところがあったのですが、本編ではカットされていました。

才能ある書き手が、オリジナル版の脚本のいいところ悪いところ、強いところ弱いところを分析して、かつアメリカ人のテイストにあうように作り直した、こういったハリウッド・リメイク版を観る度に、その洗練度に感心するとともに、方程式に当てはめて作ったみたいな計算高さに冷めてしまう部分もあります。それと、優等生の解答になっちゃうので、その分オリジナルにあった荒削りでもキラリと光る魅力みたいのがなくなって、パンチに欠けてしまいがちですが、今回はファレリー兄弟の監督なので、彼ら得意のフィジカルなギャグが、よしにつけ悪しきにつけ要所要所でオリジナリティな個性を放っていました(^_^)。またドリュー・バリモアが、そういうリアクションうまいんですよね。客席に飛び込んだボールに当たって気絶しちゃうとことか(その横で主人公はボールを取ろうとはしゃいでいる)。ファレリー兄弟は、スポーツチームへ異常な執着心を持つ主人公も、ある種の障害者として捉えているので、ホーンビーのシニカルでペーソスあふれるイギリスのお話も、「ふたりにクギづけ」や「愛しのローズマリー」などと同様、うまく彼らの路線を踏襲した映画の範疇内におさまってます。

昨年、レッドソックスのワールドシリーズが行われている球場で撮影をしていたら、絶対優勝できないチームとして有名な(何しろ地元ファンに、「安心しろ。優勝なんて万が一にもあり得ないから」と太鼓判を押されたそうです)ソックスが、なんと奇跡の優勝を果たしてしまってスタッフ一同大あわて、というニュースが流れましたが、確かにせっかく劇的な優勝をしたのに、オリジナル版のエンディングのような大団円のカタルシスがなくて、もったいなかったです。(そもそも「フィーバー・ピッチ」って奇跡の優勝を果たすお話なのに!)コリン・ファースが演じたポールにあたる役はジミー・ファロン(「TAXI」)が演じてるのですが、彼は去年、「サタデーナイト・ライブ」でゲスト出演したコリンと共演してます。その時、映画について話し合ったりしたのでしょうか(^_^)。

これはこれで、とても楽しく観れたし、原作のスピリットをなくしてはないと思うけど、やっぱり味わい深さでは、オリジナルにはとうていかないません(というか、はなから味わい深さなんて追求してないか、ハリウッド版は)。というわけで、やっぱり「ぼくのプレミア・ライフ」はそんじょそこらにない逸品だと、あらためて確認。まだ観てない人は、リメイク日本上陸前に観ておきましょう! 

★「ぼくのプレミア・ライフ」DVD(コロムビアME)のページ
★"Fever Pitch"公式サイト(英語)

☆Sin City

フランク・ミラーのグラフィック・ノベルの原作をそのまま再現したような、(グレイスケールじゃなくて)白黒二値のスタイリッシュな映像がひたすらクールだった予告編の、期待を裏切らない一本に仕上がってます。

ロスがモデルの架空の町「ベィシン・シティ」を舞台にした3つのエピソードから成っており、どれも美しい女(みんなお水関係の仕事)をいぢめる悪漢と、女を守る主人公(警官、用心棒[?]、探偵)の戦いという設定です。キャスティングがすごく豪華なのですが、みんな意外な役柄なのと、コミックそっくりの外見にするためのメイキャップが凄くて、誰が誰だかわかんないです。”イエロー・バスタード”なんて、最後まで「ターミネーター3」のあんちゃんだってわからなかったです。イライジャ・ウッドの役柄のイメージ・ギャップもすごいです。T1000みたいに冷酷無比な殺人鬼の食人鬼なんですが、なぜかトレーナーの模様がチャーリー・ブラウン(^_^:)。で、彼を裏で操ってる人物が、頭を剃りあげたルトガー・ハウアー。あんなちょい役じゃなくて、ミッキー・ロークのやったマーヴを演じてほしかった(T_T)。絆創膏だらけの顔のシルエットが長方形のマーヴは、フランク・ミラーによると、「都会のコナン・ザ・バーバリアン」なのだそうです。ベニチオ・デル・トロはメイキャップしなくてもそのまんまシン・シティ・ワールドに溶けこんでるし、特に作り込んでないブルース・ウィリスも、「ブルース・ウィリシー」(←ロジャー・エバート銘々)な部分をずいぶん押さえてます。女性陣では、さわやかなお色気のジェシカ・アルバ(中年オヤジ?>自分)や、手裏剣というよりナルトみたいなイヤリングの、ミホ役のデヴォン青木(への字口がチャーム・ポイント。ミホの使う刀のプロップは、「キルビル」でザ・ブライドが使ってたものだとかなんとか)もよかったけど、ゲイル役のロサリオ・ドーソンが一番カッチョよかったです。カッチョいいといえば、凹凸と顔の作りが濃すぎて苦手だったクライヴ・オーウェンが、モノクロのために暑苦しさがほどよく中和されてて、すごく絵になってました(でもちょっと弱っちくて頭悪い)。難点は、3人が3人とも、作ったダミ声でボソボソボソボソ、一本調子でモノローグをずーっとつぶやいてるところ。うっとうしーつーの。

監督のロバート・ロドリゲスは、原作コミックに惚れ込んで、白黒のコマの構図もトーンもそっくりに再現したお試し撮影サンプルを作ってミラーに見せ、映画化の了承を得たそうです。ロバート・ロドリゲスの『シン・シティ』ではなくて、フランク・ミラーの『シン・シティ』を目指したとのこと。忠実なファンですね〜。徹底的にコミック・アートを再現した、コペルニクス的転回の(?)映像を、スクリーンで目撃しておかないと、映画史上重要な出来事の証人になるせっかくのチャンスを逸してしまいますよ。マジで。

★「シン・シティ」公式サイト

☆「銀河ヒッチハイク・ガイド」The Hitchhiker's Guide to the Galaxy

もともとは、無名の脚本家ダグラス・アダムスが書いた、BBCのラジオシリーズがオリジナルなのだそうです。それが意外な人気を呼んだので、小説にもなりました。小説は読んでないのですが、映画公開の1ヶ月ほど前から、81年頃にBBCが作ったTVシリーズが放映されてるので、だいたいの粗筋は学習できました。TV版は、80年代のものなのでCG(チックなアニメーション)や特殊効果が素朴なのはいいのですが(NHKの「少年ドラマシリーズ」みたいでノスタルジック(^_^))、イギリス郊外の一軒家で、主人公が目覚めたら、ブルトーザーに載った建設作業員が今にも家を取り壊そうとしていた、というオープニングで始まり、大分色味の褪せた映像で、バスローブ姿の主人公とお役人の、のらくらしたやりとりがひょうひょうと交わされるので、どうにもSFっぽくなくて、「これがホントにあの名作SFと誉れ高い『銀河ヒッチハイク』なの?」と、冒頭から10分ぐらい半信半疑で見てました(^_^;)。でも、10分後にやっと宇宙船と宇宙人(“宇宙で三番目に最悪な詩をを読み聞かせる”ジャバ・ザ・ハットみたいな姿のヴォゴン星人)が出てきてSFらしくなり、しかも語り口はモンティ・パイソン調というところが、なんとも癖になるおもしろさ(^_^)。宇宙船は、宇宙の道路工事のために、地球を爆破しに来たのでした。ははん、要はSFという器を借りて、当時のイギリス人気質や社会制度(不能率なお役所仕事とか)をおちょくってるわけね。それが人気の秘密かぁ。Don't Panic!

さて、映画館は、深夜の先行上映会にしては年配層のちらほら混じる観客達で、熱気ムンムン。ふと見ると、前に座ったおっさんの剃り上げた頭に「Don't Panic! 42」という文字(42は「究極の疑問」に対して宇宙1賢いコンピューターが出した解答なのだ)と、親指を立てたヒッチハイク・マークがマジックで描いてあるではないですか。やっぱりコアなファンの集まる先行上映はひと味違います(^_^)。バスタオル(なぜバスタオルかは映画を観て納得)や映画ポスターのあたるくじびきでさらに盛り上がった後、いよいよ上映−−と思ったら、「ハウルの動く城」の予告編が流れてビックリ。「千と千尋」と違って、西洋が舞台の今回はこちらでどう評価されるでしょうか。

ダグラス・アダムスによると、地球で2番目に知的な生物だというイルカたち(ちなみに1番は人間じゃないよ)の曲芸で始まるオープニング(彼らは人間へ地球滅亡の警告を発してるのに、起用に鼻先でボールをつつく曲芸だと誤解されたのです、というスティーブン・フライによるユニークなナレーションと、「さよなら〜。今までおいしいお魚のエサをありがとう」って歌いながら、空に上ってっちゃうイルカに場内大爆笑)から、ラジオとTVシリーズ共通の、キース・エマーソンみたいなプログレ・シンセサイザーによるテーマ曲のあと、TV版と同じ、イギリス郊外の一軒家のシーン(ただしもうちょっとてきぱき進む)で、本編が始まります。主人公アーサー・デントは、BBCの人気TVコメディシリーズで今年からアメリカでリメイク版も放映されてる「The Office」や、「ラブ・アクチュアリー」「Shawn of The Dead」に出ているマーティン・フリーマン。愛嬌あるだんごっ鼻顔で、ハマリ役です。無責任で軽薄一代男な銀河大統領ザフォド(頭が2つあるんだけど、TV版と変えてあって、怖い付き方をしている。頭カラッポ&天然ぶりが、ブッシュのパロディだと指摘する人もいます)にはサム・ウェスト、紅一点トリリアン役に「あの頃ペニー・レインと」のズーイー・デシャネル。全身シルバーカラーで、テルテル坊主のようにでっかいまんまる頭がかわいいけど、うっとうしくていじけた性格のロボット、マーヴィンの声を、これまたピッタリなアラン・リックマンが当ててます。TV版の情けない三角下がり目マーヴィンも、お役人気質のヴォゴン星で、順番待ちをしている行列に混じってカメオ出演してました(^_^)。「ロイヤル・セブンティーン」や「高慢と偏見」など、いじわる女役が得意なアナ・チャンセラーが、珍しくイイ女風の、最後に報われる役をもらってます。ジョン・マルコヴィッチは、上半身だけ出演。最近、イギリス映画の最終兵器になりつつあるビル・ナイも、後半重要な役で場をさらってます。

開くたびに「ふぁ〜あ」というため息ともあくびともつかないのんびりした声を出すドアとか、infinite improbability drive(無限不可能性駆動)という、どこでもドアみたいな理論の宇宙航法の過程で乗組員がソファになっちゃったり、かわいらしい人形アニメになっちゃったりとか、楽しいお遊びがいっぱい、というか世界観がジョークでできてるような作品なのですが、その上に原作ではキャラの立ってなかった女性キャラ、トリリアンを今風に味付けして、さらに主人公とザフォドとの三角関係まで発展させてしまったので、ゴチャゴチャ詰め込みすぎ、というレビューは確かに当たってます。物語でぐいぐい引っ張ってくタイプじゃないから、ある程度筋が分かってたからいいけど、そうじゃなかったら途中でワケ分かんなくなって興味を失ってたかもしれません。TV版を見ると、「人間」=「白人男性」という旧態然とした価値観で成り立ってるので、そのへんをいじりたくなるのは分かるのですが(脚本は、2001年に亡くなったアダムス本人と、「チキンラン」のカレイ・カークパトリック)、トリリアン一人だけ現実的なキャラクターなので、映画のせっかくの、ミュージカルチックで不条理な世界観を壊しちゃってました。

そこだけが残念ですが、映画は原作ファンにも一応好意的に売け入れられてるようです。ジム・ヘンソンスタジオによるクリーチャーと、最新CGがほどよくミックスしたところもグー。ガイドブックの解説アニメも、TV版イメージを残したシンプルなアニメに押さえてあります。SF好き、イギリス的ユーモア好きには大オススメです。「スターウォーズ」最終作が公開される5月19日まで、興行成績欄を賑わせてくれるでしょう。サントラも楽しい!

★「銀河ヒッチハイク・ガイド」公式サイト(英語)

☆「ザ・インタープリター」The Interpreter

  ニコール・キッドマンが、国連で働く通訳に扮し、偶然アフリカのマトボ共和国の、独裁的な大統領暗殺計画を小耳に挟んでしまうというサスペンス・アクション。キッドマンを守るシークレット・サービス役で、ショーン・ペンが共演しています。監督はシドニー・ポラックで、本人もペンの上司役で出演しています。初めて国連での撮影が許可されたというのがウリです。"Cinematographer"という映画撮影の専門誌で、撮影風景の写真が出てましたが、風船のようにふわふわ浮かぶ照明装置が最近ではあるんですね〜。そのまんまバルーンライトっていうみたいですけど。アートってテクノロジーですよね。

「同監督の『コンドル』を思わせる良質のサスペンス映画」という評通り、一筋縄ではいかないプロットをスマートに処理してあり、たいへん見応えありました。ニコール・キッドマンがスラリとした長身を生かし、知的なパンツ・ファッションをパリッと着こなして、感情を抑える術を心得た影のある女性を演じています。その冷静さがショーン・ペンの疑惑を招き、最初はキッドマンが偽証してるか、本人が陰謀に関わってるとまで疑われ、うそ発見にかけられたりします。ただ、最初は単純な巻きこまれ型のヒロインだと思って見てたのが、実は彼女本人もアフリカ出身で、謎めいた過去を持つのがだんだん明らかになってくるのが、観客が彼女に感情移入する障害になってる気もしました。めそめそもビクビクもしない、それでいてセクシーでも男顔負けの肉体アクションをするでもない、大変まれなヒロイン像を、キッドマンは創りあげています。結果、観客にアピールする要素が彼女の素で持ってる美しさにかかることになり、その点でもキッドマンは十二分に要求に応えてました。上映前にかかった「奥様は魔女」の鼻ピクピクサマンサを演じる彼女も、すごくチャーミングですけど(^_^)。

★「ザ・インタープリター」公式サイト

次回はいよいよ、あの超人気シリーズ最終作のご紹介です。こうご期待!

ぢゃ、また来月。
(5.1.2005)
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