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■電気羊プロフィール
アニメーター、編集者を経て現在はフリーライター兼翻訳者のハシクレをしている。好きな映画は「ブレードランナー」、好きな役者はコリン・ファースと嵐寛寿郎。だんなについて、目下カリフォルニア州サンタクルーズに滞在中。せっかくなんで、コミュニティ・カレッジに通いつつ、映画三昧している。この度3年越しの夢が叶い、コリン・ファース主演作「フィーバー・ピッチ」で字幕翻訳家デビュー! 趣味はスキューバダイビングとビリヤード(どっちも超ヘタ)。日本から連れてきた耳垂れウサギを飼っている。


■過去記事一覧



写真01
「アビエーター」ポスター

写真02
「SIDEWAYS」ポスター


新年明けましておめでとうございます! 2年目に入り、ますます快調の「もぎたて映画通信」。映画賞狙いの話題作が出そろうこの時期、既に何本も賞を取り始めている勝ち組作品から、ひっそり上映されひっそり消えていく日陰者映画までまんべんなく愛を注いだスーパーサイズセットでお届けします!

☆"What the #$*! Do We Know!?"

  ドキュメンタリーとフィクションが混じったようなスタイルの映画で、量子力学的観点から世界を見たり神の存在を論じたりする科学者たちのインタビューの合間に、マーリン・マトリン扮するウツ気味の女性カメラマンが量子論的日常(?)を体験します(ごめん。うまく言葉にできないよ(^_^;))。

  地元の映画館で結構長くかかっていたし、観客が終わった後拍手してたので評価高いのかな、と思ったらメタメタけなしてる評が多かったです。サンタはニューエイジ系の店がたくさんある、元・現ヒッピーがうようよしてるような町なので、局所的に受けていたのね(^_^;)。文系のレビュアーたちによる、あの手この手の皮肉なけなし方が面白かったです。

  話しかける内容によって水の味が変わるという日本の科学者の説とか、トンデモor疑似科学として片づけられるような内容なんですが、判らないながらも一生懸命聞いてたら、途中で人間の感情や中毒性を神経細胞の働きで説明するのに、フラバーみたいなCGたちがテックス・エイヴェリー風のマンガチックな動きで延々とどんちゃん騒ぎを繰り広げるあたりで、目がテンになりました(^_^;)。

  町並みがアメリカにしてはシックで、地下鉄とかも走ってるからイギリスが舞台なのかなと思ったらオレゴンでした。

"What the #$*! Do We Know!?"公式サイト(英語版)

☆"The Young Visiters"

  これは劇場用映画ではなく、BBCのTV映画です。原作は、1981年のイギリスで、ナント9歳の小さな女の子が書いた物語。本にもなってますが、日本では出てないようですね。地元の古本屋で、1919年出版のアメリカ版を売ってたので買ってみたら、9歳の女の子が書いただけに、文法がむちゃくちゃで読んだら影響受けちゃいそうでした(そもそもVisitersって綴り間違ってる(^_^;))。ちなみに「ピーターパン」の原作者、ジェームズ・バリーが長い前書きを書いてます。バリーが主人公の『ファインディング・ネバーランド』、オススメです!

  内容は、小さな女の子による当時のイギリス社交界の観察記録みたいな感じです。なにしろ9歳児が断片的に読んだり聞いたりしてイマジネーションを膨らませて書いたものだから、かなりファンタスティックで不条理な世界なんですが、案外本質をついてたりして、子どもの観察力をなめてはいけません。子供版ジェーン・オースティンて感じ(^_^)。役者もジム・ブロードベンドにヒュー・ローリー、ビル・ナイと豪華キャスト。ブロードベンド扮する中年の冴えない男、ミスター・サルティーナが若くて美しいエセルという女性に恋をして、彼女の愛を勝ち取るために立派な紳士になるべく”水晶宮”でマナーを学ぶ、という筋立てです。ブロードベンドにフォエスト・ガンプみたいなしゃべり方をさせる演出意図がいまいちわからなかったけれども、とてもユニークで面白い作品でした。日本でも放映されればよいですね。

BBCアメリカの"The Young Visiters"公式サイト(英語版)

☆"Sideways"

  話題の賞荒らし映画。2人の男が旅をする、やっぱりこれもロードムービーです。

 マイルズ(ポール・ジアマッティ)とジャック(トーマス・ヘイデン・チャーチ)は大学のルームメイトだった。結婚を一週間後に控えたジャックへのプレゼントとして、マイルズはワインカントリーへの旅行を提案する。パッとしないTVスターのジャックは、最後の自由を満喫するため旅行中に女性と寝ることばかりを考えているような男だ(でも友だち思いの気のいい男で憎めない。少しトウの立ったジョーイって感じ)。離婚の痛手から立ち直れずにいるマイルズは、ワインだけが心の慰め。作家志望でもある彼はこの旅行中、やっと書き上げた小説へのエージェントからの返事を待っている。宿に着き、早速ワイン・テイスティングの女性(サンドラ・オー)とアバンチュールを楽しみ始めたジャックは、親友にもいい思いをさせようといろいろ世話を焼く。いきつけのレストランで、前から気になってたワインソムリエの女性(ヴァージニア・マドセン)といい雰囲気になりそうなマイルズだが──。

  LAから出発した2人は、1号線を北上してナパやソノマよりちょっと下のあたりのワインカントリーを目指します(そのままずっと行くとサンタに着きます)。『アバウト・シュミット』のアレクサンダー・ペイン監督のツボを心得た計算高さをなんとなく疎んじつつも、やっぱり抵抗しがたい味わいのある映画です。ジャックとマイルズが面白くて、リアリティもあって、何カ所か、最高におかしい場面もあります。自宅に戻ったマイルズの留守電の声が、うちの電話機と同じでした(^_^)。

"Sideways"公式サイト(英語版)

☆"Kinsey"

  1940〜50年代にかけ、人間の性行動に関するレポートをまとめた「キンゼー報告」で有名なアルフレッド・キンゼー博士の伝記映画です。

  ハチが専門の生物学者だったキンゼー(リーアム・ニーソン)は、日曜学校の説教師も務める厳格な父親の元で育ったため、結婚するまでセックスに関してはまるで無知だった。夫婦で医師に相談に行ったり、生徒から相談を受けたりして、誤った性知識が世間にまかり通っているのを知ったキンゼーは、学者魂をムクムク刺激される。人間の性行動を科学的に調査する決心をして、大学で講座を開き助手を募った。ハチの個体を何千、何万と観察してきた教授は、2つとして同じ個体はいないこと、全ての個体はユニークであることを学んでいた。人間相手にも彼は同じ要領で、数年かけてアメリカ全土を回り、1人ひとり、助手と手分けをして対面インタビューをしてデータを集めていく。そうして出版された「男性の性的行動」は、全米で一大センセーションを巻き起こすのだった──。

  キンゼー博士は象牙の塔タイプというか、大分浮世離れしてます。彼の常識にとらわれない言動が投げかける波紋への、奥さんや助手、大学の同僚、パトロン、そして世間の対応の仕方も興味深く描かれています。特に、研究のためなら限度を知らないキンゼー博士、助手の1人(『ニュースの天才』のピーター・サーズカード。この人は今後要注目です)と寝てみたり、助手同士で奥さんのスワッピングを奨励してみたり、自分の局部を傷つけてみたり(痛いばかりでちっとも快感じゃなかったらしいです(^_^;))、ああいう人をサポートしなくちゃいけない奥さん(ローラ・リニー)はいろいろ大変だと思いますが、度量の深い人で、普通の人ならダメ出しするような局面でも暖かく見守ってあげます(それが後々、キンゼーのためによかったかどうかは不明)。オープニングシークエンスで、キンゼー博士の思春期が簡潔に手際よく紹介される(少しホモ傾向があるところまでそれとなくほのめかすのがサスガ)ので、彼女ほど度量の深くない我々観客も、彼のエキセントリックな行動になんとかつきあっていけます。あの限度を知らないところは、彼の忌み嫌う父親(ジョン・リスゴウ)譲りですね。何しろジッパーの発明まで、「不貞を誘発する!」と糾弾するような人ですから(^_^;)。キンゼー博士はとうとうそんな父親にまでインタビューしちゃうので、ホントいい勝負。

  監督は、『ゴッド・アンド・モンスター』のビル・コンドン。オープニングのところとか、助手たちへのインタビューの仕方を訓練するところとか、全国インタビュー集めの旅の様子を合衆国の地図の上に被験者のTalking Headsがどんどん増殖していくことで表すところとか、面白いところいっぱいです。被験者の中に、凄い性豪がいて、彼の話に助手もキンゼイも口あんぐり状態になってしまうのですが、その人物に「あんたも同類だと思ったのに」とガッカリされて、傷つくキンゼイも印象的。世間の目もまた、研究発表の内容とキンゼイ本人を同一視して、レポート第二弾「女性の性的行動」出版後、彼を激しく糾弾するのです。タブーなんて何にもなくなっちゃたような現代ですが、実は当時とそれほど変わっていなくて、本作の製作を始めようとした3年前から、既に様々な抗議を受けていたそうです。ジェームズ・ホエール監督を描いた『ゴッド・アンド・モンスター』のエンディングは大好きですが、今回はもう少しどろくさい終わらせ方の方が似つかわしいような気がしました。エンドクレジットで、いろんな動物のマウンティングの実写映像(キンゼー研究所から提供されたらしい)が見られます。もちろん多産の象徴、うさぎさんも出てくるのだ。

"Kinsey"公式サイト(英語版)

☆『クローサー』"Closer"

  ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライヴ・オーウェン出演、マイク・ニコルズ監督の、大人の恋愛ドラマ。舞台劇がオリジナルなだけあって、登場人物はエキストラ以外、本当にこの4人だけでした。時間の端折り方が大胆なのも、舞台のせいかなと思ったのですが、「人は大事なところ、最初と最後だけ覚えているものだから」だそうです、監督によると。「恋愛の記憶」がテーマだとしたら、少し『エターナル・サンシャイン』に似てるかもしれません。あんなふうにはブッとんでないけど、『羅生門』的に4通りの主観で語られる話が断片的で、自分でパズルを組み立てないといけないから(^_^;)。

  ダン(ロウ)とアリス(ポートマン)の出会いから、物語は始まります。ロンドンの雑踏を、反対方向から歩いてきた2人の目がふと合い、お互い吸い寄せられるように近づいていく。ところが、左右を見ないで横断歩道を渡ったもんだから、アナが車と衝突してしまいます(アリスはアメリカ娘だから、車が左から来るって分からなかったってオチ(^_^;))。ここまで会話は一切なくて、倒れたアリスが開口一番ダンに語りかけた言葉が「ハロー、ストレンジャー」。「ストレンジャー」は、この映画のキーワードになります。アリスの怪我はたいしたことなくて、病院まで付き添ってあげたダンとのシーンの後、すぐにポーズを取って座っているダンと、ファインダーを覗く美人写真家アナ(ロバーツ)のシーンに変わり、二人の会話で、作家志望だったダンがアリスを主人公に書いた小説で作家デビューして、その表紙のための写真撮影をしている場面だというのが分かります。最後の一人、ラリー(オーウェン)は皮膚科医で、勤務中にオンラインチャットでデート相手を探している軟派野郎(股間に手を伸ばすなっつの)。ダンのいたずらで、水族館で出会ったラリーとアナは付き合い始めます。4人が始めて揃って顔を合わせるのは、アナの写真展。そこから4人のだましだまされ、恋愛ゲームが始まります。

  誰が主人公でもなくて、皆等分に描かれてるし、それぞれ魅力的ですが、オーウェンとロバーツのデカ顔コンビよりは、ロウとポートマンの意外なカップルの方に肩入れしたくなっちゃうでしょう、やっぱし(^_^)。ロウ演じるダンは、一言で言うと「策士策におぼれる」役。ポートマンはなぜかストリッパーの役で、彼女のヌードシーンが最終的にカットされたことが話題になりました。クライヴ・オーウェンは、「例えピンクのカツラをかぶっていても、ナタリーはオードリー・ヘップバーンみたいだ」と言ってます。ストリッパーの役をしてても、清楚ってことですね。だってアミダラ姫だもんね。それにしても、昨年後半のジュード・ロウハリウッド大進撃作戦は凄かったです。まだ『コールド・マウンテン』での熱演の記憶冷めやらぬ中『スカイキャプテン』を見にいけば、"I Heart Huckabees"と『アルフィー』の予告編が流れ、さらに年末には本作でしょ、TVでも『サタデー・ナイト・ライブ」でホストを務めたらアシュレー・シンプソン口パク事件が起きたりして、すっかりアメリカでも「イギリス1の美形俳優」としての地位を固めました。

  愛が生まれる瞬間は凡庸で、結構おざなりに描いてますが(ラリーがアナにイルカの風船をプレゼントするところはチャーミングだったけど)、愛が覚める瞬間の容赦なさが大変気持ちいいです。ロバーツやロウみたいに美男美女であればあるほど、気持ちいいのよね、正直(^_^;)。人間思い切りが大事よ。

  クリスマス期間で、周り中ツリーや飾り付けでハッピー・ハッピー気分の折、ピリッとしたものが欲しくなった時にうってつけの、アダルト〜な映画でした。

『クローサー』公式サイト(英語版)

☆『アビエイター』The Aviator

前作『ギャング・オブ・ニューヨーク」の雪辱なるか(評価&成績)の、注目のスコセッシ&デカプーコンビ第2弾。ハワード・ヒューズの伝記映画です(最近伝記ものが多いなあ)。前評判がかなり高かったので、期待して見にいったのですが、期待を上回る完成度で感激! 開演前にトイレに行けなくて、適当なときに席をはずすつもりだったんですが、もう片時もスクリーンから目を話せませんでした、3時間。辛かったよう(T_T)。これでアカデミー賞監督賞もらえなかったらウソだかんね。

  1927年。映画『地獄の天使』撮影中のヒューズは、ハリウッドの渇いた大地に何十機もの複葉戦闘機を並べ、ひたすら雲が出るのを待っている。映画作りと飛行機、それがヒューズの2大関心事だった。大学から気象学のエキスパート(イアン・ホルム)を引き抜いて雲の出る地域を予測させ、ようやく狙い通りの空中戦に成功するが、待機中にも映画技術が進んで初の長編トーキー映画『ジャズ・シンガー』が上映されたのを知ると、『地獄の天使』をトーキー化するためにさらなる時間と金を注ぐのだった。3年かけ、ようやく完成した映画の試写会場チャイニーズ・シアター(素晴らしいセット)に、主演女優ジーン・ハーロウを伴って現れるヒューズ。映画は成功を収め、次回作に取りかかるとともにより早い飛行機の開発にも余念がない。自ら設計にかかわり、テストパイロットを務める彼にはキャサリン・ヘプバーンという恋人も出来、行く手を阻むものは何もないかに見えた。だが、当時航空業界を独占していたパンナム社がTWA社の台頭に警戒しだし、ヒューズの強迫神経症も少しずつ進行していくのだった──。

  ハリウッド映画のアイコン、キャサリーン・ヘップバーンを演じるケイト・ブランシェットが素晴らしいです。脚本が冴えていて、才気煥発で歯に衣着せぬヘップバーンのセリフはいちいち大受けしてました。怖い物知らずの気性の出所が分かる、彼女のヒューズを伴っての里帰りシーンも最高でした。あんな家族とのディナー、ヒューズじゃなくても逃げだしたくなっちゃいます(^_^;)。自分の世界に閉じこもりがちのヒューズとの関係に悩むヘップバーンの前に現れたスペンサー・トレイシーの登場シーンがカッコイイです。たったの一言と、カウチの袖に乗せた脚の1カットだけで、この人物が彼女の救世主になるというインスピレーションを与えるのです。

  Premiere誌によると、はじめ監督はマイケル・マンだったそうで、彼は製作に名を連ねています。ヒューズの話を作りたかったのはディカプーだったみたいですね。スコセッシは『地獄の天使』がお気に入りなのだとか。映画のクライマックスは、パンナム社長(アレック・ボールドウィン)が裏で糸を引いている政府によるヒューズの査問委員会。政府の金を無駄に使って、まともに飛ぶ軍用機を一機も献上出来なかった事に対する糾弾の場へ、パラノイアが最高潮に達して自室から一歩も出なくなってしまったヒューズ(彼にはバスルームすら不潔に思え、用足しも空き瓶で済ますので、部屋の中にオシッコ入り瓶のコレクションが…(^_^;))が、果たして顔を出して、反論できるのだろうか!? 

  豪華絢爛セット&スター(ジュード・ロウも出るよ!)、そして迫力の飛行シーン(一度ヒューズは墜落事故で全身大やけどを負って死にかける)で魅せる、オブセッションにオブセッションされた(回りくどくてすみません(^_^;))男の孤独についての物語。

『アビエイター』公式サイト

ぢゃ、また来月。
(Jan 7/2005)

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